こんにちは。司法書士試験に興味を持ち、試験について調べて「記述式試験」の存在を知った方に向けて、今回はその勉強法と学習のポイントを4つご紹介します。
記述式試験は択一式試験とは異なり、司法書士試験独自の、非常に独特な試験形式です。論文式試験ともまた違ったこの記述式を、どのように攻略したらいいのか、どんな風に勉強を進めるべきか、その具体的なアプローチについて詳しく解説していきます。
このテーマを知ることで、あなたは記述式試験の難しさと、それをクリアするために必要な能力、そして具体的な学習方法を理解できるでしょう。ぜひ、合格への道筋を立てるための参考にしてください。
記述式試験の難しさと求められる能力
まず簡単にですが、司法書士試験の中での記述式試験の位置づけをお話ししていきたいと思います。この辺りはもうお調べになっていてご存知な情報だと思いますので、軽く見ていきたいと思います。
基準点の低さが示す難易度
司法書士の試験というのは午前の部と午後の部があります。記述式の試験というのは午後の部で出題がされます。不動産登記法が1問、それから商業登記法が1問、計2問ですね。不登法と商登法1問ずつ出題がされます。
配点は合計で140点満点ということになっています。令和6年度の試験から140点満点になり、配点が70点満点から倍の140点満点に変更されました。令和5年度までは70点満点でしたので、令和6年度から配点が倍になったということなんですね。
記述式試験には基準点というのがあります。この基準点という点数を少なくとも超えないといけないという基準点が設けられているんですね。
ではこの基準点というのが今までどれぐらいだったかというと、まず70点満点だった時に基準点がどれぐらいだったか。直近の5年間ですが、低い年だと大体30点ちょっと、30.5点なんていうのが令和5年度で、ちょっと高めの年でも35点ぐらいですね。令和4年度は35点だったんですが、大体30点から35点の間ぐらいで基準点が推移しています。
また、140点満点となった令和6年度の基準点は83.0点でした。
何が分かるかというと、記述式試験の基準点は、他の科目と比べて得点率が低く設定されてきた歴史があります。これを聞いてみてどういうような印象を持たれるでしょうか。非常に難しい試験だと思われると思うんですね。
つまり、記述式試験というのは合格者であっても高得点を取るのが難しい、相対的に難易度の高い試験だということです。それぐらい記述式試験で点数を取るというのは難しいと思ってください。
求められる3つの能力:スピード・判断・事務処理
そのような記述式試験なんですが、この記述式をクリアするためにどんな能力が求められるのか、これを3つご紹介したいと思います。
まず1つ目は、スピードが求められます。
先ほどお話ししたように、司法書士試験は午後の部で記述式の問題を2問解かなきゃいけません。午後の3時間なんですが、3時間で記述式の問題だけを2問解くのであればいいんですが、その中で択一式の問題も35問解かなきゃいけないんですね。
択一を35問解いた後に記述2問を果たすと、これは計3時間でやるというこういう試験なんですね。ですので、非常にスピードが求められます。
記述の問題というのはかなり分量があるんですね。見ていただくと分かりますけども、かなりの情報量があります。それを3時間の中で択一も含めて処理をしなきゃいけないということなので、非常にスピードが求められます。
それから2つ目は、やはり判断能力が求められます。
どんな雛型を使うのか、それから添付書面は何になるのか、そして何件申請するのか。例えば2件申請するっていうものを1件にしてしまえば当然点数が減点になってしまいますし、逆に2件で済むところを3件申請するなんてことであれば、さらにまたそこで減点になるわけですね。
こんなところを判断していかなければならない。判断能力が求められます。
それから最後の3つ目としては、事務処理能力が求められます。
これはスピードと判断能力ってこととも通ずるんですけども、記述式試験というのは実務の模擬体験です。ある依頼人が司法書士のところでやってきましたで、こういう登記をしてくださいっていうストーリー形式で話が進んでいくわけですね。
実務の模擬体験なんですよ。ですので、事務処理能力が求められます。
これも、ぜひ過去問をご覧になっていただきたいんですけども、問題パラパラって見ていくと、別紙1とか別紙2とかっていう、いわゆる別紙っていうものが資料として非常にたくさんつけられてるのが分かると思います。
例えば遺産分割の協議書だったりで、登記簿はもちろんですけども、商業登記であれば定款だとか株主総会議事録だとか、いろんな資料が添付されるんですね。その中から必要な情報っていうのを瞬時に引っ張り出す、瞬時に見つけ出して処理をする、そういう事務処理能力が求められます。
時間がありませんので、ゆっくり読んでいられないんですよ。隅から隅までゆっくり読んでるなんて時間ありませんので、例えば遺産分割協議書であれば、こことここを見るんだと瞬時に判断できるような事務処理能力ですね、これが求められます。
記述式の学習ポイント4つと学習ステップ
では、そのような記述式試験なんですが、どんな風に学習していったらいいのか、ポイントとなる4つをご紹介していきたいと思います。
1)雛型は手が動くレベルまで習熟させる
まず1点目は雛型の習熟。これは確実に書けるようにしておいてください。
よく言われることなんですが、迷ってる時間はありません。もうこの登記を書くって思いついた瞬間、手が動いてるぐらいのレベルになってなきゃいけないという風によく言われます。それぐらい雛型は自分に染みついている、それぐらいまで雛型が書けるようになっていただきたいなという風に思います。
2)習うより慣れ!演習量をこなす
それから2つ目、やはり習うより慣れです。
記述試験というのは、可能な限り演習量をこなせばこなすほど実力が身についていきます。もちろん、択一式試験も過去問演習というのは非常に重要なんですが、それ以上に記述式というのはやはり問題演習量に実力が比例します。
ですので、予備の講座を受講される方であれば、答練とか模試とかこういったものを活用してですね、少しでも多くいわゆるその初見の問題を解いてみるということやっていただければと思います。
3)過去問で論点と独特の雰囲気を掴む
それから3つ目、やはり過去問は大切です。
合格者の中には、択一の過去問はもちろんしっかりやったんですが、記述の過去問ってそれほどやりませんでしたよって方もいらっしゃいます。中には全く記述の問題見ることなく合格したなんて方もいらっしゃるんですね。
でもやはり過去問というのは大事だと思ってください。
合格する方で、先ほど言ったように過去問見たことないっていう方なんで過去問見なかったのかって聞くと、同じ問題が2度と出ないからという風におっしゃるんですね。確かに択一と違って記述式の問題というのは毎年大きく違いますから、同じ問題っては確かに出ないんですね。
ただ、同じ論点というのは繰り返し出題される傾向というのがあります。ですので、過去にこういう論点が出たんだ、こんな出され方されたんだってことは是非知っといていただきたいと思いますので、過去問やはり何度かやらないよりはやった方がいいとそう思ってください。
それから本試験の問題というのは、予備校が作る問題と違ってまた独特の雰囲気っていうのがあります。それはやはり本試験を解くことでしか味わうことができませんので、その本試験の問題独特の雰囲気、独特のあくたさ、その辺りを掴んでいただければと思います。
4)択一の知識あっての記述!学習を怠らない
それから最後になりますけども、択一の学習を怠らないということです。
記述式だけを学習してても記述ってできるようにならないんですね。記述式の試験というのは、択一式試験の上乗せっていうような位置付けになりますので、基本的にはやはり択一の知識を使っていくと思ってください。記述で使うオリジナルの知識っていうのはそんなにないんですね。
普段択一の学習で使ってる知識を記述式問題でも使っていくということになりますので、択一の学習は怠らずにやっていただければと思います。
一点注意点なんですけど、例えばある年にですね、択一の試験は基準点を超えたんですが記述式がダメだったよって方、その翌年記述ばかりを勉強する方がいらっしゃいます。そうすると、逆に択一の実力ってのはガクンと落ちてしまうんですね。
そもそも択一の基準点を超えなければ記述式試験いくらできても採点してもらえませんから、やっぱり合格できないんですよ。ですので、ある年記述式に失敗して落ちてしまったよって方、次の年の対策としてその辺りは気をつけていただければと思います。
まとめ
- 記述式は難しい試験だが、「どんな問題が出ても基準点は必ず超えられるレベル」を目指すべき
- 令和6年度から配点は140点満点に倍増したが、試験時間・問題数に変更はない
- 記述式の実力は、択一式の知識の上に成り立つため、択一の学習を怠ってはならない
- 過去問で問われる論点は繰り返されるため、本試験の「独特の雰囲気」と合わせて学習する
記述式試験は、合格者ですら基準点をわずかに超える程度という難度の高い試験です。しかし、合格者は例外なく、難しい問題が出ても確実に基準点をクリアできるだけの基礎力と演習量を身につけています。
令和6年度からの配点変更により、記述式の重要性はさらに高まりましたが、対策の根幹は変わりません。択一と記述、双方の学習バランスを保ち、実務の模擬体験である記述式に積極的に慣れることが、合格への最短ルートとなります。
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