今回は、司法書士を目指している方や、これから資格の勉強を始めようと考えている方に向けて、ちょっと立ち止まって考えてもらいたいテーマです。
司法書士資格を取得して、いざ実務に就いたとしても、「こんなはずじゃなかったのにな」と後悔してしまう人が一定数いるのは事実でしょう。これは、司法書士の仕事が外部から分かりづらいという性質も要因かもしれません。
そこで今回は、現役司法書士の有志グループ40人に、実際に資格を取得して「後悔したこと」についてアンケートを取りました。この記事では、その具体的な回答結果と、私自身(ITベンチャー企業でエンジニアをしていた経験があり、事務所で働きながら3度の受験を経て合格した司法書士)の経験に基づく見解をお伝えします。
この情報が、皆さんが司法書士という資格を目指すにあたって、将来像やキャリアを考える上での正確な情報収集の一助になれば幸いです。
司法書士資格を取って後悔してしまう人の特徴
特徴1:考えるのが苦手な人
まず1つ目の特徴は、「考えるのが苦手」ですね。これはその通りかなと思う部分はあります。
考えるというのも色々あるとは思うのですが、司法書士の仕事はやはり法律を使いますので、論理的に組み立てないといけなかったりします。
あとはその実務でいうとその段取りはすごく大事なのです。我々の仕事はある程度期限が決まっていることが多いので、その期限というゴールに向けてどういう段取りを組めば問題なく手続きが済むか、というのを組み立てていく必要があります。
そういった組み立てなどが苦手な人は、ちょっと後悔してしまうかもしれません。ただ、これは訓練したり、慣れることによって克服はできるかなと個人的には思っています。
特徴2:高い給料で勤務ができると思っている人
次の後悔する人の特徴は「資格を取りさえすれば高い給料で勤務ができる」と思って頑張ってきた人。
まず前提として、司法書士合格をした後のスタートの給料、初任給についてはここ数年で年々上がってきています。
なので、資格を取れることによって、ある程度いい条件で働くことができるような環境というのは、徐々に整備はされてきてはいると思います。
ただ、司法書士の資格を取りさえすれば、全員が給料をたくさんもらえるというわけではないですね。
司法書士の資格は取ってからが始まりです。ゴールではなく始まりなのですよね。
これから実務をしっかり身につけていってスキルを身につけないといけないですし、スキルがあるだけでもだめで、このスキルをお客様のために使って、お客様から価値を感じてもらって、そこで評価をいただいて初めて報酬をもらえます。
そういった意味で「資格を取るだけでいい給料をもらえる」と思っていると、それは違うよ、ということになり、勘違いとか後悔の要因になると思います。
特徴3:忍耐強くない人
続いては「忍耐強くない人」。これは1つ目の「考えるのが苦手」というのに通じるところがありますが、後悔という点では、当てはまる部分あるかなと思います。
忍耐強さと言われると、司法書士の仕事って、そんなきついことばっかりあるのかと思われるかもしれませんが、そういうことではなく、これは「粘り強さ」に置き換えた方がより伝わるかなと思います。
我々の仕事って試験だと正解があるんですけど、実務だと正解がない問題に対して何かしらの答えを出さないといけない場面というのは、結構あるんですね。
そういった時に、いろんな書籍を読んだり、文献を調べたり、過去の先例などを調べたりして、いろんな情報を集めて根拠をつけて、「このケースだとこうなりと思います」という見解を示します。
そうした時は、答えがないのでいろんな情報を集めないといけません。これがかなり大変だったり、でもそこには、やり遂げる、といった、粘り強さが求められます。
ここで「答えが書いてないから分かりません」と諦めてしまうと、お客様の期待には応えらませんし、信頼もされません。つまり継続的な仕事に対するリスクにもなり、そうした意味では、忍耐強さというか、粘り強さというのは求められてくるかなと思っています。
特徴4:資格に対して期待が大きい方
それから、4つ目として「資格に対して期待が大きい方」。司法書士というものの資格に対する期待が高すぎると、実際に司法書士になった時に後悔してしまいます。
例えば、資格を取れば、お客様のほうから次々と仕事を持ってきてくれると期待している。実際は士業であっても、積極的に仕事を取るための営業活動や人脈作りは欠かせません。
また、難関資格だから実務は簡単だとか、法律の条文さえ知っていれば対応できると考えている。実務ではイレギュラーな事例が多く、判例や先例を探す粘り強さが試されます。
さらに、資格を取ることで、これまでのキャリアで感じていた不安が全て解消され、一生安泰だと思い込んでいる。市場や技術の変化に対応し、常に新しい知識やスキルをアップデートし続ける姿勢は必要不可欠です。
理想と現実のギャップがあって後悔してしまうという方は、この理想と現実のギャップを埋めるためには、ある程度情報収集をした上で、正確な情報で理想の姿を描くということをすると、いざなった時のギャップは少なくすることができるのではないかなと思っています。
司法書士の経験がキャリアにもたらす価値
ここまで司法書士になって後悔をするという、アンケート結果のご紹介していきましたが、私が思う、この司法書士の資格を取っても後悔してしまう人について話をしたいなと思います。
私は司法書士の試験に合格したのは、もう10年以上前になります。
同じ年に合格をした同期の人とか、周りの司法書士を見ていると、司法書士の理想と現実のギャップを感じている人はもちろんいるとは思うのですが、実際に司法書士の仕事を続けている方が圧倒的に多いのですね。
これは理想と現実のギャップはあったとしても、この仕事がいいなと思っている人が多いと思うので、司法書士の仕事を続けている人が多いのかなという印象はあります。
それから、私の周りにいるケースだと、今司法書士をやっていない人というのは、この司法書士の経験を生かして新しいチャレンジをされている方がいます。
これは、ビジネスの分野などで、新しい分野に挑戦したいとか、新しいキャリアに進みたいという形で選んでいる方がいるのですが、そういった方々も、司法書士として仕事をした経験というのが、今のキャリアに生かせているというのはよく聞くのです。
これは、司法書士って結構バランス感覚が必要な仕事で、ビジネスではやはりバランス感覚って結構重要なのですよね。
AとBとのバランスを取るとか、もっと多いと、A、B、C、D、Eとあって、その中のAとBを優先するとDとEがだめだったりとか、Eだけ優先すると他がだめだったりみたいな形で、そこをバランスうまく取って最適な状況に保っておくというのはいろんな場面があると思います。
司法書士ってまさにそのバランスを取る役割だったりするのですね。
その感覚が、事業においても生かせる場面はあるのかなと思うので、実際そういう形で活躍されている方もいらっしゃいます。
なので、後悔をする人はいるのかもしれないのですが、大多数の方がやはり司法書士の資格を取って良かったな、という風に言っているのではないかなと思います。
まとめ
- 実務では、論理的思考力や問題解決のための粘り強さ、仕事の段取りが求められる
- 資格はゴールではなくスタート。高報酬は実務スキルと顧客への価値提供によって得られる
- 司法書士の経験で培われるバランス感覚は、他分野でのキャリアにも生かせる
今回は、あくまでも現役司法書士有志のアンケート結果と私の考えです。この情報だけを見て「私も後悔しちゃうのかな」とは考えず、こうした情報も踏まえた上で、皆さんの将来像やキャリアというものを考えていただけると嬉しいです。
その上で、司法書士という資格を目指すかどうかを決めていただきたいなと思います。
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