タイのお寺に行くと「曜日ごとの神様」がいることに気が付く方も多いと思いますが、実は「干支ごと」のお寺がある(正確には「干支ごとに守護する仏塔がある」)というのは知ってる人も少ないかもしれません。
というのも、この干支ごとの寺院はタイ北部や隣国に存在し、タイ中部や南部にはないからなんですね。
私も随分長い間その存在に気が付きませんでしたが、今回はそんな寺院の1つ「ワット・ケートカラーム」に訪れたことがきっかけで知るようになりました。
今回はこの「ワット・ケートカラーム」の紹介や、干支ごとの寺院(仏塔)とはどういったものかのご紹介!
チェンマイ観光のはじまり「ワット・ケートカラーム」
チェンマイはタイの京都と言われるほど寺院が多い場所。
別記事で紹介している「ワット・プラタート・ドイステープ」とか「ワット・プラシン」など、タイ全国的にも有名なお寺も多いですね。
そうした中、先日、妻の弟家族がバンコクからチェンマイに遊びに来て、一緒にチェンマイ観光に出かけると、朝一で「ワット・ケート・カーラーム」という寺院に寄りました。
(旧市街の北西にあって徒歩でも行けるほどの距離。メコン川の近くで、地元では古くから親しまれているお寺さんなんだとか)
タイの人は何かあればすぐお寺にお参りするので、たまたま見かけたお寺に「お!ちょっと参拝しておこう」みたいな感じで寄ったのかな、と思ったら、弟が丁度「誕生日」であり「戌年の生まれ」だから「ここに寄るつもりで来た」と妻に聞かされました。
「へ~、干支専用のお寺があるんだ」
この時初めて干支のお寺があることを知ったわけですが、これは古くから伝わるタイ北部の文化のようですね。
タイ北部に根付く干支文化とは?
後で調べてみると、この干支のお寺はタイ北部にかつて栄えたランナー王国から伝わるもの。
(ランナー王国とは、13世紀ごろから300年ほど独自の文化・政治体制で栄えたタイの王国の1つ。タイ北部が中心の王国だったことから、干支のお寺の文化はバンコクなどタイ中央や南部にはない)
誕生年(干支の年)にその干支のお寺の仏塔をお参りすると功徳がある(徳を積める)と言われてます。
日本や中国にはこうした「干支を担当するお寺」という文化はないようですね。
干支を担当するお寺は、今回訪れた「ワット ケート カーラーム」のようにチェンマイにあるお寺もあれば近隣の県(チェンライ、ランプーン、ランパーンなど)の場合もあるし、本家のお寺はミャンマーにある、という場合もあります。
このあたりはまた後程紹介しますが、今回の「ワット ケート カーラーム」の場合には、仏塔は天界にあるとされ、その分身がこのお寺に祭られている、という位置づけになってます。
(戌年の人では天界までお参りに行けないので、分身の仏塔をこのお寺に作った、ということになるようですが、スケールの大きなお話ですよね)
実際「ワット・ケートカラーム」を歩いてみた
実際に「ワット・ケートカラーム」はどんな所か、お参りの仕方は何か普通のお寺と異なるのかなど、一緒に見て回りましょう。
お参り用セットと干支人形
まずはタイのどのお寺も大体同じですが、入り口を入ってすぐ「お参り用セット」(ブーチャー:บูชา)を受け取ります。
以下の画像のように「お供え用の花」、「ろうそく」、「お線香」がセットになったもの。

このお参りセットは、タンブンをする意味で(功徳を積む意味で)20バーツ(80円ぐらい)など好きな額を寄付して受け取ります。
(妻は20バーツを出すことが多いようですが50バーツとか100バーツとか、特に金額の決まりはないようですね)
そしてこのお寺が干支のお寺であるかを示す「陶器でできたミニチュアの干支人形」もここに乗せます。(自分の生まれ年の守護動物として乗せるのだ)

この干支のお人形を参拝セットに一緒に乗せてお参りするんですね。
以下は蛇年の人が干支の人形を参拝セットに乗せてるところ。

お花の他にろうそくや線香も見えますね。
このお寺は戌年がメインですが、他の干支にもしっかり気配りされてます。
(チェンマイあたりに来て、干支のお寺をお参りしたい!という場合には、どの干支でもお参りできるようになっているので、是非この寺院に立ち寄ってみてください)
お参りと干支のお寺専用の言葉
以下はお祈りをしてる様子ですが、お祈りセットを両手に持って捧げるようにしつつ、目の前にお祈り用の言葉が書かれたプレートがあるので、それを読む、みたいな感じです。

こうしたお祈りのスタイルはどの寺院でも同じですが、干支ごとの寺院らしく「戌年担当の仏塔への祈る文言(経文)」が書かれてます。
ちなみにこのお寺で言えば、
目の前にある「お祈り用の言葉が書かれたプレート」には以下が書かれてます。
- お経の基本の出だし「ナモ タッサ~」がまず書かれていて、
- その後に、天界にあるとされる仏塔 「プラタート・ゲーサ・ケーウ・チュラマニー」 を称える「ケーサ・チュラマニー」(เกสจุฬามณี)が繰り返し出てくる
- 最後は願いの文で 「この功徳によって、災いを避け、良いことが訪れますように」と結ばれている
訪れた人はこうした文を読み、お祈りを捧げます。
戌年以外の人も、専用の経文が寺院内で紹介されているので(後述)、それを見て唱えても良いですね。
天界の仏塔
この寺院の干支を守護する「仏塔の本体」は天界にあるとされてますが、天界ではさすがにお参りできない、ということで、その代理として「プラタート・ゲーサ・ケーウ・チュラマニー」(พระธาตุเกศแก้วจุฬามณี)が建てられてます。

この干支を守護する仏塔はとても美しく、金色の装飾がされ、黄色の布が巻かれている、という、とてもタイらしいですよね。
上から多くの紐みたいなものが伸びてますが、これは「祈願の紐」のようで、仏塔全体を結界のように守る意味があるのだとか。
またこの写真からは分かりづらいですが、
この仏塔の下の方にある仏像の両脇には中国語で「祈敬有應」(祈れば必ず応える)などの文字が刻まれてます。
タイは中国とゴールデントライアングル(チェンライの北の先の場所)で接していて、古くから中国系の方々との交流も多いようで、お寺にもこうした中国語表記が結構見られるのはそうした歴史的背景があるからなのでしょう。
本殿はランナー建築
この寺院の本殿(ウィハーン / วิหาร)となる建物が以下。

屋根が特徴的で、数えてみると5層になってますよね?
これはタイ北部で発展した「ランナー様式」。
以下は屋根の部分を拡大したものですが、屋根の先端は「チョーファー」と呼ばれるタイの伝統的な寺院建築。(ランナー様式で、鳥のくちばしのように天に向かって反りあがっているのが特徴的)

また屋根の上から下に向かって流れるようにデザインされてるのは「ナーガ」(蛇神)の場合が多いですが、この建物の場合、何かが違う。
以下その先端を拡大したものですが、こうしてみると先端以外は「ナーガ」(蛇神)、先端は「ガルーダ」(神鳥)に見えますよね。(先端では口には玉(宝珠)を咥えてるようにも見えます)

「ガルーダ」は天を翔け悪を払う神鳥であり、「ナーガ」は雨を降らせて田畑を潤し、豊穣をもたらす蛇神。
屋根にこうしたミックスされたデザインが施されているということは、「天(空)」と「水(地)」の両方から守られるように、といった意味が込められていることになるでしょう。
ちなみにこの本堂の中に入ろうとしたら、入り口付近に僧侶がお二人いて、何か作業をされてるようだったので遠慮しました。^-^;)
また後で調べて分かったんですが、
この寺院「ワット・ケートカラーム」には有名な博物館があるんだとか。
ここに訪れた時、妻も弟家族も誰もそのことを知らず(まぁ地元の人はそういうものなのかも)、「そうだったんだ!チェックしてなかった!」と後で一人で残念がってる私(笑)
どこに博物館があったのかな、と今更ながら思いますが、どうも木造の古い建物という情報があるので、この寺院に訪れる場合には、しっかりおさえておくのが良いですね!
小さな祈願堂
この寺院の境内には他にも建物がありますが、もう1つ紹介するとしたら以下。

小ぶりな「祈願堂」となると思いますが、こちらもランナー建築らしく屋根が複数重なり、豪華な彫刻が施されてます。屋根にはナーガ(蛇神)のデザインが綺麗になされてますね。
(こちらはとお目に見てもナーガと分かりそう)
建物の中には仏像もまつられ、手前には参拝者が鳴らせる鐘も用意されてます。(鐘は神様とかに”お参りしに来たよー”と告げるものと以前妻から聞いたような。本当はどうなのかな...)
デザインの見事さに「ほ~」と、しばし見とれてしまいそうな美しさですね。
他の干支はどの寺院?
この寺院「ワット・ケートカラーム」は十二支では「戌年」(いぬどし)のご担当。
境内には、以下写真にあるように、
他の干支担当の寺院はこちら!と紹介もされてます。
(各々の寺院で捧げる経文(お祈りの時に唱える文言)も一緒に紹介されてますね)

これらに掲載されている内容を簡単にまとめると、
干支を守護する仏塔(とその寺院)は以下になります。
干支 | 仏塔名 | 仏塔名(日本語) | 寺院名(タイ語) | 寺院名(日本語) | 場所(県・国) |
---|---|---|---|---|---|
子(ねずみ) | พระธาตุศรีจอมทอง | プラタート・チョムトーン | วัดพระธาตุศรีจอมทองวรวิหาร | ワット・プラタート・シー・チョームトーン・ウォラウィハーン | タイ・チェンマイ県 |
丑(うし) | พระธาตุเจดีย์ลำปางหลวง | プラタート・ランパーンルアン | วัดพระธาตุลำปางหลวง | ワット・プラタート・ランパーンルアン | タイ・ランパーン県 |
寅(とら) | พระธาตุเจดีย์ช่อแฮ | プラタート・チョーヘー | วัดพระธาตุช่อแฮ | ワット・プラタート・チョーヘー | タイ・プレー県 |
卯(うさぎ) | พระธาตุเจดีย์แช่แห้ง | プラタート・チェーヘーン | วัดพระธาตุแช่แห้ง | ワット・プラタート・チェーヘーン | タイ・ナーン県 |
辰(たつ) | พระธาตุเจดีย์พุทธสิหิงค์ | プラタート・プッタシン | วัดพระสิงห์ | ワット・プラシン(ワット・プラシン・ウォラマハーウィハーン) | タイ・チェンマイ県 |
巳(へび) | พระธาตุเจดีย์พุทธคยา | プラタート・プッタガヤー (ブッダガヤー大塔の模塔) | วัดเจ็ดยอด | ワット・チェディヨート (本家:マハーボディー寺院) | タイ・チェンマイ県 (本家:インド・ブッダガヤー) |
午(うま) | พระธาตุเจดีย์ชเวดากอง ประเทศพม่า | プラタート・シュエダゴン(ミャンマー・シュエダゴン・パゴダの象徴塔) | องค์แทนวัดบ้านตาก จ.ตาก | ワット・バーンタク (本家:シュエダゴン・パゴダ) | タイ・ターク県(本家:ミャンマー・ヤンゴン) |
未(ひつじ) | พระธาตุเจดีย์ดอยสุเทพ | プラタート・ドイステープ | วัดพระธาตุดอยสุเทพ | ワット・プラタート・ドイステープ | タイ・チェンマイ県 |
申(さる) | พระธาตุพนม | プラタート・パノム | วัดพระธาตุพนม | ワット・プラタート・パノム | タイ・ナコンパノム県 |
酉(とり) | พระธาตุเจดีย์หริภุญชัย | プラタート・ハリプンチャイ | วัดพระธาตุหริภุญชัย | ワット・プラタート・ハリプンチャイ | タイ・ラムプーン県 |
戌(いぬ) | พระธาตุเจดีย์วัดเกตการาม | プラタート・ワット・ゲートガラーム | วัดเกตการาม | ワット・ケートゥカラーム | タイ・チェンマイ県 |
亥(いのしし) | พระธาตุดอยตุง | プラタート・ドイ・トゥン | วัดพระธาตุดอยตุง | ワット・プラタート・ドイ・トゥン | タイ・チェンライ県 |
タイ以外に本家があるパターンは2つで、、十二支の「巳(へび)」が「インド」、「午(うま)」が「ミャンマー」。いつかは本家にお参りに行きたい、と思う方も多そうですね。
またこの表を見ると、ドイステープのお寺(ワット・プラタート・ドイステープ)のあの見事な仏塔も干支(未(ひつじ))を守護するものだったようです。
関連)
チェンマイのドイステープ!チェンマイ大学の新入生が必ず上る山と寺院を紹介
※参考)「模塔」、「象徴塔」について
巳(へび)では、ブッダガヤー大塔の「模塔」、午(うま)では、ミャンマー・シュエダゴン・パゴダの「象徴塔」となってます。タイ語からすると「模塔」では「レプリカ・模型」といった意味合いが強く、「象徴塔」は「本尊や本家の代理(形を真似ただけでなく、ご利益も本家とつながっている)」みたいな感じになりそうですね。
経文(祈願内容・ご利益)の文も各々掲載されてますが、ざっくり要約すると、全てに共通して「仏陀への帰依や厄除け、災いを遠ざけ幸福と繁栄を祈願する」といったような内容になってるかと思います。
ただ表現は異なったり文章量は違っていて、
たとえば最後の「戌(いぬ)」と「亥(いのしし)」では明らかに文の量が違います。

より詳しく訳してみると以下になってますね。
- 「戌(いぬ)」の経文 概要:
仏陀に帰依し、仏の髪(の一部)と仏舎利に敬意を払います。これを通じて厄除けや幸福を祈ります。 - 「亥(いのしし)」の経文 概要:
過去の四仏(カクサンダ仏、コナーガマナ仏、カッサパ仏、ゴータマ仏)と未来の弥勒菩薩を敬い、彼らがこの地(プラタート・ドイ・トゥン)で悟りを開いた功徳をたたえます。この聖地で礼拝することで、祝福と功徳を得ることを願います。
こうした干支の寺院にお参りする場合でも、その他の寺院でも、タイのお寺では唱える文言がプレートで表示されているので、翻訳アプリとかを使って日本語でお祈りすると良いと思いますよ。
(お祈りは別に何語で、気持ちが大切ですからね)
では今回は、タイ北部にある「十二支を守護する仏塔」(寺院)と、その中の1つ「ワット・ケートカラーム」の紹介でした!
チェンマイに訪れる機会があったら、ドイステープにまず行ってみるのも良いですが、この「ワット・ケートカラーム」も忘れずに訪れてみてくださいね。
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