タイは一年中暑いので、日本の四季と比べると「あまり季節感がない」という印象を持つ方も多いと思います。
私もその一人でしたが、実際タイで暮らしてみると、季節によって咲く花があり、タイの季節の移り変わりを感じる機会もありますね。
ということで、今回はタイといえばこの花!暮らしの中で出会う花と言えばこの7つ、ということで私の体験と共にご紹介!
タベーク:桜を思い出させる花
花と言えば、日本人誰もが思い浮かべる花に桜がありますよね。
タイでは4月から5月といった、1年で最も暑い時期に咲く花に「タベーク」(ตะแบก)というものがあり、これが遠めに見ると桜に見えることがあります。
(タイ語の発音を聞くと、最後の「ク」は聞き取れず単に「タベー」と聞こえる)

ちょっと調べてみると、日本でいう「サルスベリ」(百日紅)と同じ花のようですが、タイで見るこの花は、薄い紫色が多く、満開になるとまるで桜が咲き誇ってるかのようになって凄く綺麗。
このタベーク、家庭の庭や町中のところどころで咲いてますが、タイは日本のように街路樹を同じ花で飾ってみることは少ないようですが、銀杏並木のような感じでこのタベークが道の両側に咲き誇るような並木道ができたら、きっとすごく華やかで美しい景観になるのでしょう。

タベークは香りがほとんどないようですが、風にゆるゆると揺れる姿がとても綺麗です。散り際はあまり注意して見たことないですが、この花が咲くと「もう4月か...日本でも桜が咲いてるだろうな」なんて思います。
ラーチャプルック:タイの国花は色鮮やか
上で見たタベークと同じく、4月のソンクラーン(水かけ祭り:日本で言うお盆の季節)の時期に咲き誇る黄色の花「ラーチャプルック」(ราชพฤกษ์)もタイでは季節を感じさせる花の1つ。
英語では「ゴールデンシャワー」(Golden Shower Tree)と呼ばれ、花の特徴通りの名前が付けられていてますね。この花が咲くと「もうソンクラーンか」なんて思う方も多いのでしょう。

この花を例えれば「黄色の藤の花」みたいな感じで、花が落ちる時は一気に落ちて銀杏のように地面が黄色い絨毯(じゅうたん)のようになり、それもまた綺麗ですよね。
この花はタイの国花で、「ラーチャプルック」の「ラーチャ」は「王」、「プルック」は「木や植物」を意味するのだとか。黄色は仏教の色であったり、前国王(ラーマ9世)の誕生日が月曜で、月曜の色がタイでは黄色ということもあって、広くタイの人には親しまれてるようですね。
タベークとは違ってこのラーチャブルックは並木道があるようで、チェンマイではドイカム・ロイヤルプロジェクトのあたりにありますね。
今年はソンクラーン見学のついでに寄ってみましたが、以下のような感じで綺麗に咲いてました。

以前チェンマイ大学の近くに、このラーチャプルックの並木道があると聞いた記憶がありましたが違っていたようです。
ちなみに妻はこの花の名前も、この花がタイの国花であることも知らなかったとか。
まぁ「日本の国花は」?なんて聞かれても「桜...?いやまて菊か?」なんて迷ったりするので(どちらも正解)知らなくてもそれは割と普通の事かも知れませんね。
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リーラワディー:タイの花と言えばこの白い花
タイの花と言えば、
この白くて可愛らしい花を思い浮かべる人も多いでしょう。

プルメリアという花になるようですが、
タイでは「リーラワディー」(ลีลาวดี)と呼ばれます。
昔は別の名前で呼ばれてましたがどうも「”悲しみ”を連想させる縁起の悪い名前」ということで今では「リーラワディー」と呼ばれてますね。
(サンスクリット語由来の造語で、「エレガントで美しい」とか「気品のある美しさ」といった意味)
タイではスパやタイマッサージの看板・広告には必ず登場したりするので(ベッドの上にぽつんと置かれた写真や美しい女性と共にこの花が写っている写真など)、タイに行ったことがない、という場合でも日本のタイマッサージのお店で見かけることも多いと思います。
タイでは年中いたるところで咲いてるので、「タベーク」や「ラーチャブルック」とは違って季節を感じさせる花とは違いますが、こちらは妻も即名前が言えるぐらい有名、というか、タイ人にはとても身近な花になるのでしょう。

タイに旅行で行くようになった頃、確かパタヤだったと思います。スカッと晴れた朝に近所を散歩して海の方に歩いていくと、途中にこのリーラワディーが沢山咲いていて「綺麗だな~」なんて見上げていたら、多分近所の人なのでしょう、割と年配の男性が花を指さしながら一言「リーラワディー」と言ってました。
多分私が外国人と気が付いて、花の名前をそっと教えてくれたんだと思いますが、タイでは道端で出会った人がこうして花の名前を教えてくれることもあり、地元の人々の優しさや花への親しみを感じられます。
このリーラワディーは成長が早く枝も広がりやすい花木のため、住宅事情によっては管理に注意が必要とされることもあります。我が家の場合も元々このリーラワディーの木が庭にあり、花をたくさんつけてましたが、庭を通り抜けるのを凄く妨げていたので植木屋さんに引き取ってもらいました。
ただその後、やっぱりリーラワディーの花が庭でも見たい!と思い、2本改めて邪魔にならない所に植えましたが、これが中々花が付かないんですね。
植え替え後すぐには花が付きにくいこともあるようで、日当たりや水やりの調整が必要そうです。
ソーイ・サーイ・ペット:家族の訪れる時期に咲く花
毎年春節の前、1月後半から2月前半の時期(丁度観光客が一段落したタイミング)に家族が訪れることが多く、花の開花とともに季節の訪れを実感しています。
日本では1年の中で最も寒い時期になると思いますが、チェンマイ(タイ北部)でも冬の時期で、早朝の最低気温は15度以下になる日も出てきます。(日中は30度超えるんですけどね。この時期バンコクでは早朝25度とかで10度ぐらい違う日もあるんですね)
この頃、タイの北部は正に旅行シーズンでとても過ごしやすい(というか朝は寒い)ですが、この時期になると咲く花が「ソーイ・サーイ・ペット」(สร้อยสายเพชร)。

ツルが垂れ下がって、そこに5つの花びらを付けた小さく可愛らしい白い花が沢山つきます。
名前の「ソーイ・サーイ・ペット」は「ダイヤモンドのネックレス」という意味で、日が当たるとキラキラ輝いて見えて「まさにその通り!」という感じです。
この名以外にも地域によっては「ラヤー・ゲーオ」(ガラスのようなたれ飾り)とか「プラン・ラヤー」(垂れた花房)など、別の呼ばれ方をするようですね。
少し日陰になるところと、庭の中で他の木に隠れたところで育ってますが、「朝は結構寒くなったな...」なんて思って過ごしていると、その内この花が写真のように咲き出します。
時期的には旧正月(春節)前後、1月下旬から2月上旬ぐらいでしょうか。
この花は地下茎というのか、気が付くとすぐ近くの別のところからニョキニョキ育っていて、2m以上もの高さに育ったことがあります。手入れをあまりしなくてもよく育ち、繊細な見た目とは裏腹に丈夫な性質を持つのが特徴のようですね。
カフェとかでも見かけることがあると思うので、タイに来たら是非探してみてくださいね。
モーク:小さく可憐な花
上で見た「ソーシ・サーイ・ペット」と同じように「白く小さく可愛らしい花」と言えば「モーク」(โมก)。
英語名は「Wrightia religiosa」(ライティア・レリギオサ)というようですが、近所のいくつかの家では生垣として家の周りにグルっと植えられていて、3月ぐらいに一面花をつけたりします。

調べてみると「花をつけるのは通年」という説明を見かけましたが、チェンマイなどタイ北部では3月ぐらいに花をつけることが多いようです。
庭木として少し植えたのがありますが、この花が咲き出すと、何かキンモクセイのような甘いほのかな香りただよい、暑季の訪れを告げる花として親しまれています。
(この花の次は最初の方で紹介している「タベーク」とか「ラーチャプルック」といったソンクラーンの時期になりますね)
生垣に植えたいと一度は思いましたが、もう既に「ドークケム」という後で紹介する花が植わっているので、このままでいいか、となってます。

お花自体は、本当に小さな花がチョコチョコついてる、といった可愛らしさ。丸いつぼみや下向きに咲いてるところが可憐な印象を与えます。
その奥ゆかしい姿からか寺院とか役所などの周りに植えられていることも多く、タイに来てお寺さんに行く機会があったら探してみてください。(特に3月ごろ)
ジャスミン:タイの文化に深く根差す花
寺院のお供えやタクシーの中で見かける、何か花輪みたいなものがありますよね?
これは「プワン・マライ」(พวงมาลัย)と呼ばれる、「ジャスミン」を使って作られたお供えやお守りとして使われるもの。
以下はバンコク中心にある大型ショッピングセンター「SIAM CENTER」のエントランス付近にある大きな祠(土地神様のための祠)の様子ですが、花輪「プワン・マライ」が沢山飾られてます。

すぐ下には「ろうそくと線香を立てる時間は12時と18時」と書かれている。(安全対策などからでしょう)
この「プワン・マライ」、白が「ジャスミン」、黄色が「マリーゴールド」、赤やピンクは「バラなど」の生花を手で編んで作られるもの。
写真に見られるように神仏へのお供えは勿論、安全祈願や商売繁盛のお守りとして車の中に掛けてる人も多いですね。タクシーに乗るとバックミラーとかにこのプワン・マライが掛かってるのを見かることも多いと思います。
そうしたお守りにもなることから、交差点で信号待ちの車1台1台に会釈しながらこの「プワン・マライ」を売っている人を見る場合も多いです。(バンコクというよりチェンマイの方が、そうした人を見る確率が高いかも)
また上の写真では花輪の形をしてますが、以下のように「ジャスミン山盛り」の形をしている場合もあります。

この写真はチェンマイのワットドイカム(ドイカム寺院)で撮影したもので、単純にジャスミンを山盛りにしてるのではなく、仏塔の形を模してるお供え物。
「ドークマイ・クラープ」(ดอกไม้กราบ)とか「パーン・ドークマイ」(พานดอกไม้)と呼ばれるもの。
ジャスミンのお供えは事前に予約しておくことも可能ですし、ワットドイカムの周辺には専門店が並び、現地で購入することもできます。
(大きさによってお値段が違います。写真にあるものよりもっと小ぶりのもので1000バーツ(4千円ほど)。大きなものは普通に1万円以上はしそうです)
以上からすると「ジャスミン」はタイにおいて神聖な花となるようです。またタイにおける母の日(8月12日:シリキット王太后の誕生日)には子供が母にジャスミンの花輪を送ったりすることから、愛情、敬意などの意味もあるようですね。
ちなみに母の日にジャスミンをプレゼントするのは、1976年に8月12日が「母の日」としてタイで制定されてからのようですね。
参考までに、以下は町の市場で売っているジャスミンの花輪の様子。

ドーク・ケム:タイの四つ葉のクローバーは赤い色
最後に挙げるタイの花は、こちらの「ドーク・ケム」(ดอกเข็ม)。

タイ語的には「針の花」という意味ですが、
これは多分つぼみの時の細くとがった形から来ているのでしょう。
この花に初めて興味を持ったのはアユタヤに行った時の事。
アユタヤに限らず寺院ではこの花が沢山植わっている場合が多く、なぜが人々がこの花に集まって何かを探しているような感じがしました。
妻に「あの人たち、何で集まってるの?」なんて聞いてみると、
- 「5つの花びらのものを探してるのよ。」
- 「タイでは5つの花びらのドーク・ケムはラッキーな印なの」
そう言われ、「なるほど、タイではこの花が四葉のクローバーの代わりなのか...」なんて、今でもその時のことが強く印象に残ってます。
最近では昔に比べてこの「5つの花びらを探す人」は減ってる気がしますが、見つけるとちょっと嬉しい気持ちになるかもしれません。
家にもこのドークケムが植わってますが、タイプが違って花弁が結構大きい種類。(以下の写真がそうです)

見ようによっては「赤色のアジサイ」みたいな感じですが、こちらも上の方で見た「タベーク」や「ラーチャプルック」と同じような感じで3月や4月に沢山咲いてます。
(基本は一年中咲いてますが、写真のように沢山花をつけるのはこの時期だけ)
タイに観光で行くと、バンコクでは「ワットポー」や「ワットアルン」、「王宮」(グランドパレス)など寺院を訪れることも多いと思います。そんな時には隅の方に「この花ないかな」、「5つの花びらのドークマイ、ないかな」、なんてチェックしてみてくださいね。(きっと良いことあると思いますよ!)
カムティアン花市場:チェンマイの花屋さんについて
タイにも花屋さんが沢山ありますが、
日本のように屋内に花を飾っているのとはちょっと違って、屋外に花を沢山出しているのが基本。
道路沿いの花屋さんもそうですし、
よく行くホームセンター(HomePro)の屋外にある花屋さんも同じで、外に沢山花が出ていて、半分ぐらいが屋内みたいなイメージ。
以下はチェンマイでも有名な「カムティアン花市場」(Kamthieng Flower Market)の様子ですが、どの花屋さんも店先に沢山の花を出してるのが見えますね。
通り沿いにある花屋さんでは、お店の前のスペースも限られているので、ここまで多くの花を外に出せませんが、イメージ的には似たような感じになると思います。
私もここで5年ほど前に朝顔を購入していて、特に世話をするということもないんですが、今でも沢山の花をつけてくるのが嬉しいですね。

この写真は購入当時のものですが、
今では庭の木に巻き付いてかなり上の方まで伸びつつ、写真のような青い花をつけてくれます。チェンマイの暑い気候や冬の寒い期間にも耐えてくれる強い花ですね。
ちなみにこのカムティアン花市場のエリア内には100店舗以上の花屋さんが集まっている「タイ北部では最大級の花市場」と聞いてますが、実際訪れてみると徒歩では一日で回り切れないぐらいの広さ。
位置的には、チェンマイの顔とも言える「ターペー門」から車で10分とか15分ぐらい。
チェンマイ観光ではターペー門を訪れる場合も多いと思います。お花好きな方はそこからちょっと足を延ばして、タイではどんな花々が並んでいるか、カムティアン花市場に寄ってみても良いですね。
参考までに、以下はカムティアン花市場のすぐ近くですが、町の通り沿いにある花屋さん(というか園芸店)の様子。

通り沿いの花屋さんは、多い少ないはありますが、大抵こんな感じで歩道に草木、花を置いてるのですぐ分かります。
最後に
今回紹介した花々は、いずれもタイの暮らしや文化の中で身近な存在です。旅行や滞在の際には、ぜひ季節ごとの花にも注目してみてください。
また、タイの花というわけではないですが、アジサイが大好きで、実はタイでも涼しい地域ではアジサイも咲いてたりします。(ドイ・インタノンの山の上など)

アジサイはタイではお花屋さんで売っていて、
これまで何度も買ってはダメにしてしまってます。
いつか家の庭に沢山咲いてくれればいいですが、気候的に難しいかもしれませんね。
また最後のおまけで、花とは少し異なりますが、
以下、庭先にある木で、黄色い卵のような実をつけます。

これはタイでは「マプラーン」とか「マヨンチット」と呼ばれる甘酸っぱいフルーツ。タイでも人気のある果物で、3〜4月頃に旬を迎えます。
以上、タイの暮らしに根差した季節の花々をご紹介でした。訪れる時期によって咲く花が異なるため、旅行や滞在中は、ぜひ花々にも目を向けてみてください。
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