タイでの暮らしでは、「車が必要かどうか」は住む場所によって大きく変わります。
バンコクのような都市部なら、タクシーやトゥクトゥクが日常的に使えるので、車を持たずに生活する人も多いかもしれません。でも私が暮らすのは「タイ北部の地方都市」。
日々の移動には車が欠かせず、正直、車がないとかなり不便です。
日本にいた頃は車にはほとんど縁がなく、移動は電車やバイクが中心でした。そんな私が人生で初めてマイカーを持つことになったのがタイに移住してからです。
この記事では、車に興味ゼロだった私がどんな視点で車を選び、実際に購入・納車した体験をお話しします。現地ならではの意外な慣習や、トラブルに巻き込まれた話も交えながらお伝えできればと思います。
バイク派だった私がタイで車を選ぶ理由
日本では交通の便の良い所に住んでいたことから、車は所有してませんでした。
今では誰もが当たり前のように車を持ってますが、私の場合、交通の便が良いところに住んでいたことに加え、「そもそも車に全く興味がなかった」というのが一番の理由になります。
もともと私はバイク派で、若い頃は逆輸入の大型バイクにまたがり、風を切って走るのが何よりの楽しみだったんです。
そんな背景もあり、車にはまったくと言っていいほど興味が湧きませんでした。
- 車は荷物が運べれば何でもいい
- 車はそもそも必要ないし、動けば何でもよい
車に対する私の価値観はシンプルで、荷物が運べればそれで十分。
好みのバイクが目の前を走ればつい目で追ってしまいますが、車ではそうしたことも一度もなく、会社で同僚たちが車の話を熱心にしているのを聞いても、どこにそんなに熱くなる理由があるのかピンときませんでした。
そんな私でも、タイに引っ越してからは公共機関だけに頼るわけにはいきません。というのも、暮らすことになったのはタイ北部の地方都市であり、公共機関が少なく、移動手段として車は欠かせない環境だったから。
そこでやっと重い腰を上げ、タイで車を購入することになりますが、そんな私でも、実は好きな車が2つありました。
- 1つはアニメ「ルパン三世」に登場するクラシックカー
(メルセデス・ベンツ SSKでしょうか) - もう1つは同じくルパン三世が乗っている小さく丸型の車
(フィアット 500(Fiat 500)と思われます)
どちらも『カリオストロの城』で印象的なシーンに登場し、車に興味がなかった私でも心惹かれたんですね。
タイの車選びのポイント
ということで、タイで車選びをするにあたっては、以下の3点を押さえた上での大選抜。
- 1)価格的に高くないこと:
- 2)丸っこいこと:
- ルパンが乗ってる車のように、丸くて小さめの外観が良い
- 大きい車は駐車場停めるのに面倒そうだし
- 3)日本車であること:
- やっぱり品質は大事
- 日本車はタイでもその品質に対する信頼度は高い
タイ北部の家に引っ越しの荷物が日本から到着する数週間は、バンコクで過ごしていたこともありバンコクで車探しとなりました。
また親戚の家に泊めてもらえたので、ホテルを探す手間やホテル代を考えなくて良くなり、とても助かりました。
タイでも日本車は非常に人気で、トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、などなど、街のいたるところで日本車が非常に多く走ってます。
ちなみに、バンコクのような大都会はもちろん、地方の田舎町でもBMWやベンツといった高級車をよく見かけます。日本に比べても、その存在感はかなり大きいようですね。また韓国車も多く走っていて、タイに住み始めてから初めて「韓国でも車を作っているんだな」と知りました。
ホンダ車を選んだ理由
購入した車は、最終的にホンダを選んでます。
なぜそこに行きついたか、タイで自動車購入を検討する方の参考になると思いますので少し詳しくお話しします。
3つの選択肢
まずはどのメーカーのどの車がいいのかと近くのカーディーラーを順にめぐる訳ですが、その中で良いなと思ったのが以下3つ。
- 1)日産のマーチ(丸い形が良い)
- 2)日産のノート(小さくコンパクトにまとまっているのが良い)
- 3)ホンダのJAZZ(こちらもコンパクトにまとまっているのが良さそう)
当時タイ(バンコク)で見た日産マーチは1200cc。
その丸みを帯びた外観から、日本では特に女性に好まれているそうです。男性の自分としては少し気になった部分ですが、国が違えば車の印象や選び方も変わってきますし、日本でのイメージにとらわれる必要はないですよね。

かわいらしい丸みのあるボディでタイでも人気の日本車。
日産ノートは販売員いわく「今注文しても納車は半年後になる」とのこと。
タイでは車種やグレードによって納車時期にかなり差があるようで、人気車種や輸入モデルは納車までに時間がかかるケースもあるそうです。
今すぐ車が必要だった自分にとっては、さすがに半年は待てませんでした。
次はホンダのJAZZ(ジャズ)は1500cc。
日本では聞き慣れない名前かもしれませんが、実はこれ「FIT」と同じ車です。見た目も同じですし、乗り心地やサイズ感も含めて、FITユーザーならすぐに分かると思います。
以下、FITの初代。

小回りが利いてどこでも運転しやすそうなコンパクトカー。

というわけで、結果として「日産マーチ」と「ホンダJAZZ」の2つが、私の選抜基準で候補として残ったわけです。
※JAZZの補足)
タイでも「FIT」となっている車見たことがある人もいるかもしれません。これは以前タイで大規模な洪水があった時にJazzの生産が出来ず(タイにはホンダの生産工場があり、そこでJazzも作っている模様)応急措置として日本から日本仕様の車、つまりFITを輸入していた時期があったようです。
この時JAZZの代わりに販売されたFITが、今なおタイでは活躍してます。
最終選んだのはホンダだった
以前日本で乗っていた大型バイクはスズキでしたが、その前に乗っていた400ccバイクはホンダ。ホンダとは縁があるし、だからJAZZの方がいいかな、と思っていたところ、親戚の中で車好きな人に相談してみました。
すると、いきなり「断然ホンダのJAZZが良い」という結論をお話しされます。
理由は「なるほど」というものでしたが、たとえばバンコクみたいな都会の街中に住み、普段も街中ぐらいしか運転しないならマーチでも良い、でもタイ北部は山道や、そうでなくても坂道を走ることも多いだろうから、排気量が多い(パワーのある)JAZZの方が危なくなくてよい、というものです。
思わず納得し「JAZZにしよう」ということで改めてカーディーラーへ。白の車体を選んだのですが、実は見た目に少し物足りなさを感じていました。
街中でよく見かけるような無難なデザインという印象で、自分としてはもう少し個性が欲しいと感じたんです。
見た目に差がつくオプション装備
ふと横を見ると、同じJAZZなのに、どこかスポーティーな雰囲気をまとったモデルが目に入りました。
ノーマルの車体に、前方にはフォグライト、後方には黒いエアロパーツのようなものが追加されていて、白いボディと絶妙なコントラストを描いてます。外観全体が引き締まり、思わず見惚れるような仕上がり。
「あれと同じにしてください。」
「あれと同じ?...はい、分かりました」
言葉で詳しく伝えるのが難しかったため「同じにしてください」とだけ伝えたところ、これでそのまま理解してもらえて、ノーマルのJAZZの前後にオプション付けることで契約完了です。
ちなみに、画像にあるようにナンバープレートが赤色は新車の証。
最初の何か月かは赤色で、その後税金を払うだか何かすると白のナンバープレートに変わります。
(タイに来て赤色プレートの車を見かけたら、あの人新車買ったんだ、と分かりますね)
タイの新車価格は、日本と比べてもかなり高め。たとえばJAZZの場合、オプション込みで70〜75万バーツほど(当時のレートで約230万円。2025年6月現在では300万円以上)。日本の感覚で「小さめの車=安い」と思っていた自分には、かなりカルチャーショックでした。
でもタイで家を購入する際に、
あまり高いものを選択しなかった分の差額がここで活きてきたのは良かったです。
※)タイで家を購入する話は「タイで家を購入|戸建てやマンションのポイントと体験談!お値段はいくらした?」を参照してみてください
タイの人が車に求めるものとは?
ここで、車に対するタイの人の価値観を少しお話ししておきます。
タイで暮らしていて驚いたのが、車に対する周りの見方。
日本では車は“移動の手段”という感覚が強かったんですが、こちらではちょっと違います。乗っている車で「この人は経済的に余裕がありそう」とか「何かで成功している人」といった印象を持たれることが多いようです。
実際、私の住んでるムーバーン(ビレッジ)でも、ベンツやBMWを当たり前のように見かけますし、カムリを2台並べてる家もあったりします。
カムリと言えばかなり昔にCMで見ましたが(渋めの俳優さんが登場するバージョン)、日本で見ることはめったにないかもしれません。今では日本より海外市場で活躍しているようですね。
もちろん普通の日本車に乗ってる人も多いんですが、「どんな車に乗ってるか」で、その家の暮らしぶりが見えるようなところがありますね。
またタイでは、たまに「家の価格」「月の収入」など普通に聞かれる場合があります。日本だとちょっとびっくりするような話題も、こちらではわりと日常会話のひとつなんですね。
そう考えると、車が“自分の今の暮らしを映すもの”として見られてるのも、なんとなく納得できます。
納車時に免許がなかった話
私史上初の自家用車はホンダJAZZに決定し、しばらくしていよいよ納車の日がやってきます。
納車の日、タクシーでディーラーまで向かったのですが、実はこの時、私も妻も、まだタイの運転免許証を持っていませんでした。
妻はちょうど地元の自動車学校に通っているところで、その数日後に免許を取得。
私は日本で国際免許を取得していたので、それを使ってタイの免許証へ切り替え可能な状態ではありましたが、ただ「しばらく運転してないし、まぁ後でいいか」とのんびり構えていた結果、納車時点では免許を持っていないという事態に。
結局、運転は免許を持っていた妻の親戚にお願いすることになりました。
関連)
タイの自動車学校は日本と全然違う?運転免許証の意外なメリットも紹介!
納車当日にまさかのガス欠トラブル
新車を受け取り意気揚々と、親戚の家までドライブです。が、そこでまさかのトラブルが発生。
途中で親戚の方が「何か変だ」と呟き、どうやらアクセル踏んでもスピードが出ないみたいです。交通量が激しい道の途中で、今にも止まりそうなスピードまで落ちていきます。
実はカーディーラーで最初に入れてくれたガソリンは少しだけ。近くのガソリンスタンドまで辿り着ける程度しか入っていなかったようです。
それを聞き逃したのか、担当が言い忘れていたのか分かりませんが、車は橋の上で動かなくなってしまいました。
周囲の車が高速で走り抜けていく中で、車内は一気に緊張感に包まれます。
右往左往していると、運よくパトロール中の警官(パトカー)が来てくれて、事情を伝えたところ、橋の上は追突される危険性もあり、車を押して橋の向こうに移動するよう促されました。
そこで皆で車を押して橋を渡り切り、なんとか通りのわきに車を移動させることができました。

中途半端な場所で停まっていて少しヒヤッとする状況ですが、タイのバイク警官のサポートに感謝です。
私はその場で状況を見守っていたのですが、しばらくすると、別の警官がバイクで現れました。よく見ると、手には小さなガソリンタンク。どうやら近くのスタンドまで行って、ガソリンを買ってきてくれたようです。
正直、あのときは驚きました。まさかここまでしてくれるとは思っていなかったので、本当にありがたかったです。

タイで車を購入したら、すぐ近くのガソリンスタンドに行って、ひとまずガソリン入れることをお忘れなく。
納車時の伝統的な慣習
その後無事車も動き、ホッと一息しつつ、親戚の家に到着です。少し休憩というところですが、ここでタイの納車の儀式がありました。
儀式と言っても大したものではないですが、親戚のお母さんが何やら大きな枝と水の入った器を持ってきます。
何が始まるのか見ていると、枝の葉を水に浸して、その水を車に向かってサッサッと振りかけ始めます。
タイでは、こうして水を振りかけるのは「厄除け」や「安全祈願」の意味があるようで、寺院でお坊さんにお祈りしてもらうときにも同じような作法があります。
車を清め、新しい出発を祝う、そんな静かな儀式を目の前にして、「あぁ、この国にはこういう丁寧な節目の文化があるんだな」と感じました。
こうして無事納車が終わり、後はタイ北部へこの車で行くばかり。
道のりは700kmぐらいですが(東京から広島までと同じぐらいな感覚。大阪からなら仙台など)、この時も最初は車の運転が怖くて、親戚に運転を頼んだのでした。
最後に
車を買うときは、日本でもタイでも、まず「どこを走るのか」「どんな道が多いのか」を考えることが大切です。街乗りが中心なのか、坂道が多いのかで、選ぶべき車も変わってきます。
またタイで会社勤めをしていない場合は、ローンを組むのが難しいケースもあります。現金で購入する前提で予算を考えておくのが安心です。
また、納車されたらまず最寄りのガソリンスタンドへ。我が家のケースのように、いきなりガス欠で立ち往生とならないよう、ここは早めの対策をおすすめします。
納車時の儀式については、タイでは年配の方に聞いてみると教えてくれたり、手伝ってくれたりするかもしれません。
タイで車を買うというのは、単なる買い物ではなく「暮らしの一歩目」「暮らしの節目」になるような気がしました。
タイで車の購入を検討している方の参考になれば、とても嬉しいです。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
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