仕事が増えているのに人は増えない。そんな状況で、以前の私は「このままでは厳しいです」「人が足りません」と上司へ伝えていました。
残業も増え、現場が苦しくなっていたのは事実です。ただ忙しさを訴えるだけでは、何人を、いつまで加えれば状況が変わるのかまでは伝わっていませんでした。
相談の仕方が変わったのは、別部門のリーダーに増員の頼み方を聞いてからです。この記事では、残作業160時間、対応可能100時間、不足60時間と整理し、必要な人員と期間へ置き換えて伝えた経験を書いています。
「人が足りない」だけでは相談が進まなかった
小規模な開発案件を担当していた頃、仕事量が増えているのに人員はほとんど変わらない時期がありました。
私は案件数や残業時間を示しながら、「この人数では厳しいです」と相談していました。自分では状況を説明しているつもりでしたが、上司から見ると、一時的に忙しいのか、本当に増員が必要なのか判断しにくかったのだと思います。
「忙しい」という言葉は、話す側と聞く側で受け取り方が変わります。私が限界に近いと思っていても、聞く側には「あと少し頑張れば終わる案件」に見えていたのかもしれません。
当時、相談しても状況が変わらないことに不満を持っていました。ただ今振り返ると、私自身も、何時間足りないのか、どの工程に人が必要なのかを説明できていませんでした。
人手不足を伝えるには、大変さを分かってもらうだけでは足りなかったのです。
別部門のリーダーに聞いた数字の出し方
同じ会社に、必要な時期になると人員を確保している別部門のリーダーがいました。その部門も決して暇ではありません。それでも必要な時期には人員が増えており、こちらから見ると、上司との調整がうまく進んでいるように見えました。
「なぜ自分の部門では増員が進まず、あの部門では必要な人を確保できるのだろう…」
何か伝え方に違いがあるはずだと思い、会社帰りにそのリーダーを食事へ誘い、増員をどのように相談しているのか、率直に聞いてみました。
教えてもらったのは、忙しさを強く訴える方法ではありませんでした。今ある仕事を終えるために、誰が何時間必要なのかを出しているという話です。
そのリーダーが整理していたのは、主に次の内容でした。
- 完了までに残っている作業量
- 納期までに実際に使える時間
- 現在のメンバーで対応できる量
- 不足する工数
- 追加で必要な人数と期間
しかも最初に一度出して終わりではなく、作業や条件が変われば数字を更新し、その都度説明しているとのこと。
私はそれまで、増員の相談を「現場の苦しさを理解してもらうお願い」だと考えていたところがあります。でも上司が必要としていたのは、納期や人員を判断するための材料でした。
ここに気づいてから、相談前には必ず数字をそろえるようになりました。
残作業160時間に対して60時間不足していた
ある案件で作業を整理したところ、
納品までに必要な残作業は約160時間ありました。
一方、納期までに現在のメンバーがその案件へ使える時間を計算すると、合計で約100時間でした。差し引くと不足分は約60時間。
以前の私なら、「かなり厳しい」「このままでは間に合わない」と伝えていたと思います。今回は、どれくらい足りないのかを数字で示せました。
「残作業は約160時間あります。でも現在のメンバーが納期までに使える時間は合計100時間程度なので、約60時間が不足となります。」
ここまで整理すると具体的になり、人手不足が気分や印象の話ではなくなります。
大切だったのは、160時間と100時間を、単純な人数や残り日数だけで計算しなかったことです。
納期までの100時間は実働で考えた
カレンダー上で10日残っていても、
その10日間をすべて開発作業に使えるわけではありません。
定例会議、問い合わせ対応、レビュー、ほかの担当業務が入ります。リーダーであれば、メンバーの確認や調整にも時間を使います。
以前は、残り日数に人数と1日8時間を掛け、使える時間を多めに見てしまうことがありました。しかしそれでは「実際の作業時間」とかけ離れてしまいます。
そこで、納期までの時間は予定表に残っている日数ではなく、各メンバーが今回の作業へ使える時間で考えました。
経験の浅いメンバーがいる場合は、説明や確認にかかる時間も必要です。新しい人を途中から加えるなら、仕様の説明、環境の準備、引き継ぎにも時間がかかります。
レビューする側の時間も減るため、5人いるから5人分進むとは限りません。
在籍人数ではなく、今回の作業へ実際に使える時間を合計しなければ、不足工数を小さく見積もってしまいます。
必要な人員を人数と期間へ置き換えた
不足60時間と分かっても、
「60時間分の人をください」では相談しにくいままです。
そこで「どのような人」に「どれくらいの期間加わってもらう必要があるのか」へ置き換えました。
この案件では、次のように伝えています。
「経験者1人を10日間追加するか、対象機能を減らす必要があります。」
不足していたのは約60時間ですが、追加された人も1日8時間すべてを作業に使えるわけではありません。引き継ぎや確認、レビューに使う時間を差し引き、10日間で不足分を補う想定にしていました。
ここで経験者としたのは、
人数だけ増えても、教育やレビューに既存メンバーの時間が取られる可能性があったためです。
納期までの時間が短いほど、誰でもよいから増やせば進むとは限りません。作業内容を理解し、自分で進められる人でなければ、説明する側の作業が止まったり、結果として余計に時間がかかることもあります。
必要人数を出すときは、人数だけでなく、担当してほしい作業、必要な経験、加わってほしい期間まで考えるようになりました。
数字を示すと相談内容が変わった
数字をそろえてからは、上司へ伝える内容が大きく変わりました。
以前のように「このままでは厳しいので、何とか人を増やしてください」とお願いするのではなく、残作業160時間、対応可能100時間、不足60時間を示したうえで、経験者1人を10日間追加するか、対象機能を減らす案を出しました。
数字があると、相談する側と判断する側が同じ不足分を見ながら話せます。
- 人を追加できるのか
- 対象範囲を見直すのか
- 進める順番を変えれば不足分を減らせるのか
増員を認めるかどうかだけではなく、60時間をどのように埋めるかという話に変わりました。
数字を出せば必ず増員されるわけではありません。予算やほかの案件との兼ね合いで、人を動かせない場合もあります。
それでも、「現場で何とかしてほしい」という話だけで終わりにくくなりました。不足分を残したまま納期を守るには、何かを変える必要があると共有できたからです。
私自身にとっても、数字を出した効果はありました。
「全部が間に合わない」と思っていた状況でも、整理してみると、特定の工程に作業が集中していることがあります。その工程へ一時的に人を移せば、外から増員しなくても進められる場合もありますね。
忙しさだけを見ていたときより、どこを変えればよいのかを考えやすくなったのです。
増員できない場合は不足60時間の埋め方を変える
人手不足を数字で示しても、必要な人をすぐに追加できるとは限りません。
その場合は、増員のお願いを繰り返すのではなく、不足している60時間をほかの方法で減らせないか考えます。
実際に検討したのは、次のような方法です。
- 利用開始日に必要な機能へ対象を絞る
- 納品する日を分ける
- 会議や報告に使う時間を一時的に減らす
- 他部門へ、切り分けられる作業だけを依頼する
- 現在のメンバーを、作業が詰まっている工程へ一時的に移す
以前、仕様書に書かれている機能を、すべて同じ優先度で完成させようとして作業が膨らんだことがありました。でも実際には利用開始日に必須ではない項目も含まれていました。
そこで最初の納品では主要な機能を完成させ、残りは次の段階へ回す案を出しました。最初は難色を示されましたが、未完成の状態で全体を出すより、使える範囲を先に出す方がよいと説明し、了承を得られたんですね。
ここでも、単に「間に合わないから減らしたい」と伝えるのではなく、不足60時間をどの方法で調整するのかを示すことがポイントでした。
増員できない場合でも、数字があれば相談がそこで終わりません。人を増やせないなら、対象範囲や進め方のどこを変える必要があるのかを話し合えます。
まとめ
人手不足を相談するときは、「忙しい」「人が足りない」だけでなく、次の数字をそろえるようにしています。
- 残っている作業量
- 納期までに実際に使える時間
- 不足する工数
- 必要な人数と期間
人数を考える際は、教育、引き継ぎ、レビューに使う時間も差し引きますし、増員が難しい場合でも、不足工数が分かっていれば、対象範囲や納品方法のどこを変えるか話し合えます。
以前は現場の大変さを分かってもらうことばかり考えていましたが、今では、相手が人員や進め方を判断できる材料まで渡すことを強く意識しています。


コメント