異世界に放浪の旅に出たムコーダの前に、突如として現れた伝説の魔獣フェンリル。誰もが死を覚悟するような圧倒的な存在に対し、ムコーダが差し出したのは武器ではなく、現代の「飯」でした。
この第2話で描かれた「規格外の力との遭遇」と「思わぬ形での共生」は、平穏を望む一人のエンジニアにとって、他人事とは思えない複雑な感情を呼び起こさせます。
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人生というシナリオを書き換えた「英語」というツール
ムコーダにとっての「ネットスーパー」がそうであったように、私にとっても人生のフェーズを一気に加速させた「ツール」がありました。それは結果論かもしれませんが「語学(英語)」というスキルです。
多くの人が同じだと思いますが、若い頃から海外への漠然とした憧れがあり、社会人になってからの英会話。当時は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のシナリオ版を片手に、何度も映画を見返してはリスニングを繰り返し、生きた表現を頭に叩き込みました。
あの頃の、純粋に新しい世界と繋がれることへのワクワク感は、今でも大切な思い出です。
その「ツール」を活用して、まだ見ぬ海外の友人を求めてメールでの文通を始めました。そして、その交流の中で巡り合ったのが、実は今の妻。もしあの時、「英語」という武器を手に取っていなければ、今の私の人生は全く別のものになっていたでしょう。
ツールそのものは無機質なものですが、それをどう使い、誰と繋がるかによって、人生というシナリオはこれほどまでにドラマチックに書き換わるのだと痛感しています。
「自立」が前提にある、大人のパートナーシップ
伝説の魔獣「フェンリル」とムコーダは、食を介した「従魔契約」という主従関係を結びます。しかしその実態は、フェルは飯のために守り、ムコーダは飯のためにフェルを満足させるという、奇妙な相互補完関係です。
この関係性から感じたのは、私たちが社会で築く「パートナーシップ」の本質です。
本質と言うと大げさかもしれませんが、夫婦であれ、友人であれ、仕事のパートナーであれ、理想的な関係の根底には必ず「個人の自立」があるべきと思ってます。
誰かに寄りかかり依存してしまう関係は、どちらかが倒れた時に共倒れしてしまいます。まずは自分自身が思考し、行動し、しっかりと立っていること。その上で、独立した個人同士が手を取り合うからこそ、素敵なパートナーシップが生まれます。
それはまるで『Dr.STONE』の千空と大樹のような関係に近いかもしれません。互いに自分にしかできない役割に責任を持ち、依存はしないが信頼はしている。そんな「大人の自立」が基盤にある関係こそが、ムコーダとフェルのように、予期せぬ困難を乗り越える最強の力になるのだと思います。
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「裏方」を愛する者が、図らずも表舞台へ出た時の戸惑い
ムコーダは平穏な放浪旅を望んでいますが、伝説の魔獣を連れているせいで、どこへ行っても注目の的になってしまいます。この「本当は目立ちたくないのに、成果のせいで表に出てしまう」という困惑には、苦笑い混じりの共感を覚えます。
メーカーでITエンジニアとして働いていた頃、私にも似たような経験がありました。エンジニアには避けて通れない「特許提出のノルマ」があったのですが、ある時、何気なく出した特許が社内のコンテストで1位を獲ってしまったのです。
私はどちらかと言えば、静かに裏方で技術を追求していたいタイプ。それなのに、華々しい表彰式の場に引っ張り出され、大勢の前で紹介される……。
あれは本当に恥ずかしく、居心地の悪いものでした。
その後、後輩たちから「どうやったらそんなアイデアが出るんですか?」とキラキラした目で質問された時は、くすぐったいやら困るやらで、まさにムコーダのような心境でした(笑)。
しかし、自分が意図せずとも、出した成果が誰かの目に留まり、評価される。それはエンジニア冥利に尽きることでもあります。表舞台に出る気まずさを抱えつつも、自分の仕事が誰かの役に立ったという実感は、どこかで「やってきて良かった」という自信にも繋がっていたのかもしれません。
「背景」を語ることで人を動かすマネジメントの流儀
ムコーダは、フェルを理屈で説得するのではなく、「飯」という明確なメリットで動かしました。これは、現代の組織運営においても非常に重要な視点です。
人を強引に動かそうとしても、それは表面的な従順さを生むだけ。中身が伴わないことも多いですよね。会社員時代から私が大切にしていたのは、部下に指示を出す際、単に「これをやって」と伝えるだけでなく、その「背景」や「目的」を徹底して共有することでした。
「なぜこの作業が必要なのか」「これが完了すると、次にどんな良いことがあるのか」。その目的が明確になれば、人は自発的に動きます。それどころか、伝えた内容以上の正確さや工夫を凝らしてやってくれることさえあります。
フェルが「美味い飯のため」に戦うように、人もまた、自分にとっての「納得感」というメリットがあれば、こちらが驚くほどの力を発揮するものです。命令ではなく、相手が自ら動きたくなる「動機のデザイン」こそが、52歳の今、私が考えるマネジメントの核心と言えるかもしれません。
第2話のまとめ
伝説の魔獣との旅が始まり、ムコーダの生活は激変しました。しかし、彼はその規格外の力に怯えるだけでなく、自分の特技(料理)で着実にパートナーシップを築いています。
次回は、さらに「仲間」が増えることで生まれる賑やかさと、旅の効率化について。52歳の視点から、異世界における「チームビルディング」を読み解いていきたいと思います。


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