仕事をしていると、「この人にはかなわない」と思う方に出会うことがあります。
長年その分野を担当してきたベテラン、企画力に優れた他部門の担当者、あるいは圧倒的な経験を持つ先輩技術者。エンジニアとして働いてきた私も、そうした「格上」の相手に向き合う場面を何度も経験してきました。
アニメ『はじめの一歩』第3話では、主人公の一歩が天才ボクサー宮田一郎とスパーリングを行います。圧倒的な実力差を前にしながらも、一歩は自分の持てる力をぶつけていきます。
この場面を見ていると、私がエンジニアとして経験してきた「格上への挑戦」の記憶が、自然と思い出されます。
この記事では、このエピソードをきっかけに、私がエンジニアとして経験してきた「格上への挑戦」や「敗北から得た手応え」について振り返ります。同じように挑戦の途中にいる人にとって、何かしらのヒントや参考になれば嬉しいです
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瞬間に導き出した「二つの解」:格上を驚かせたエンジニアの直感
一歩が宮田の予測を上回る一撃を放ったように、現場では長年の経験が「直感」という名の最短ルートを導き出す瞬間があります。
かつて他部門のベテラン企画職の方から、実現の難しそうな要望について相談されたことがありました。その瞬間、私の頭には即座に二つのルートが浮かんだのです。
その場で「二つの案があります」と伝えつつ、
- 1つは「既存システムを活かして短期間で対応する方法」
- もう1つは「多少時間はかかるが将来の拡張にも耐えられる構造にする方法」
という方向性を提示しました。
現場では、こうした「短期最適」と「長期最適」のどちらを選ぶかが判断の分かれ道になります。
間髪入れずに返された具体的かつ現実的な最適解に、その方は目を丸くして「え?なぜそんな瞬時に2つの案が出せるの?」と驚き、しばし言葉を失っていました。
それはまさに、格上の宮田が「素人の一歩に、なぜこれほどのパンチが打てるのか」と震撼したあの瞬間の構図そのものでした。
積み上げてきた膨大な失敗と成功の蓄積が、思考を加速させ、相手の想像を超えた価値を提示できた。エンジニアとして、積み上げが確かに役に立ったと実感した忘れにくい記憶です。
新人時代の「蔵入りプログラム」が、数年越しに息を吹き返した日
スパーリングで負けはしたものの、一歩は自分のパンチが通用することを確信しました。ビジネスにおいても、「一度は否定されたものが、時を経て認められる」というドラマがあります。
私が新人時代、心血を注いで開発したものの、当時は評価されずに「お蔵入り」となってしまったプログラムがあります。それは、当時のシステムでは手作業で行っていた処理を自動化する小さな仕組みで、作業時間を大きく短縮できる可能性があるものでした。
しかしその後、数年が経ち、私が要求仕様を作成する立場になったとき、「これを組み込んだらどうか」と再びそのアイデアを提案してみたのです。
すると当時のメンバーたちが「それ、いいじゃん!」と二つ返事で賛成してくれました。
正式な仕様書の中に、かつての自分の「分身」が刻まれた瞬間、何とも言えない報われた思いで胸がいっぱいになりました。
最終的には製品化のハードルが高く実現は見送られることにはなりましたが、「会社として一度でも真剣に検討された」という事実は、私の中で今も消えない確固たる手応えとして残っています。
座標としてのライバル:定年後に「自分の道」を走る先輩の背中
宮田という目標ができたからこそ、一歩は過酷な練習に耐えることができたと思います。52歳になった私の場合で言えば、今の「目指すべき座標」となっているのは、かつての会社の先輩です。
その方は会社を引退した後、ずっと趣味で続けていた音楽に専念し、今では現役のミュージシャンとして活動しています。自分の好きな道を、脇目も振らずにひたすら走るその姿は、あまりにも眩しく美しい。
「我が道を行く」「楽しみながら歩き続ける」。
そうした大人が身近にいることは、後を追う者にとって最高の勇気になります。あの人のように、自分もいつまでも好奇心の赴くままに歩き続けたい。その背中は、私が人生というリングで走り続けるための、消えない指針となっています。
迷いなく一歩を踏み出す「勇気や爽快感」の正体
「強いって、一体どんな気持ちですか?」
一歩が物語の中で発したこの問い。
それは新しい課題や未知の技術に立ち向かうとき、多くの人が抱く不安と期待が入り混じった感情そのものとも言えます。
数多くの現場を潜り抜け、50代を迎えた今、私が感じる「強さ」とは、決して揺るがない自信というよりも、むしろ「迷いなく最初の一歩を踏み出せる勇気や爽快感」に近いものだと思います。
目の前の困難をどう分解し、どう立ち向かうか。
その道筋が、経験という血肉によって自然と身体に刻まれている。その状態にあるとき、仕事はもはや「苦労」ではなく、次なる展開への「ワクワク」に変わっていくものだと思います。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 経験 | 失敗や成功を積み重ねた現場の記憶 |
| 直感 | 経験の蓄積から瞬間的に浮かぶ判断 |
| 行動 | 迷わず最初の一歩を踏み出す勇気 |
今回のまとめ
格上と向き合うとき、本当に必要なのは「完璧に勝つとは思わないこと」なのかもしれません。
一歩が宮田とのスパーリングで感じたのも、「勝つ」というより、自分の拳が通じたという「小さな手応え」でした。
私の仕事の中にも似たような瞬間があります。その場で二つの解を出せたことや、新人時代のプログラムが数年後にもう一度検討されたこと。
どれも劇的な勝利ではありませんが、確かに「自分の積み上げが役に立った」と思える瞬間でした。
仕事というのは、
こういう小さな手応えを積み重ねていくものなのかもしれませんね。

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