仕事の現場で「どう考えても無理だろう」と思える課題を突きつけられた経験、ないでしょうか。
私はエンジニアとして長く現場に立ってきましたが、本当に力がつく瞬間というのは、そうした無理難題に向き合ったときに訪れるものだと感じています。
アニメ『はじめの一歩』第2話には、まさにその本質を象徴するエピソードがあります。鷹村守から課された「左ジャブだけで木の葉を掴む」という無謀な課題に、一歩は数千回の素振りで挑み続けました。
この記事では、このエピソードを手がかりに「現場で本当に役に立つ努力とは何か」を、これまでの長い現場経験から考えてみたいと思います。
仕事や日常の中で「努力が結果につながる瞬間とは何か」を考えるヒントとして、何かの参考になれば嬉しく思います。
関連:問題解決できるエンジニアに共通する力とは|52歳の現場経験から考えた本当の強さ(はじめの一歩第1話)
無理難題を「小さな到達点」に分解する
仕事の現場でも、一見して「無理難題」と思えるような納期や技術的な課題を突きつけられる場合も多いと思います。しかも、それを突破しなければ目的地には辿り着けません。
仕事の現場でも、そういう局面では「モチベーション」という言葉が出てきますが、あまり曖昧な言葉に寄りかからないようにしています。
まずは「やるしかない」と腹を括る。
その上で、目的地までの道のりに「細かい到達ポイント」を置いていきます。
一つひとつの小さなクリアを積み重ねることで、結果的にモチベーションを維持し続けるのです。
例えば私の仕事でも、大規模なシステム更新のときは「全体完成」ではなく、「ログイン機能」「データ連携」「バックアップ」のように小さな達成ポイントを設定して進めてきました。
大きな問題ほど、小さく分解して進める。それが現場で身についた習慣です。
不条理さを嘆く前に、まずは「到達できる道」を模索する。この冷静な問題解決こそが、一歩が木の葉を一枚ずつ掴み取ったプロセスそのものだと思います。
天才ではなく再現性で勝つ
鴨川ジムには、圧倒的なセンスを持つ天才「宮田一郎」がいました。エンジニアの世界にも、努力を飛び越えて一瞬で正解に辿り着くような天才肌の人間が確かに存在します。
私自身は、自分は天才肌では全くなく、よく言えば「秀才肌」の部類だと自覚しています。つまり、すぐ物事を飲みこめるのではなく、地道な積み上げを行うことでしか、力を付けられないタイプです。
でも天才でないからこそ、私は「なぜそうなるのか」という論理力や推理力を徹底的に磨くことができたと思っています。感覚に頼らないからこそ、その思考法は再現性があり、ビジネスという「世渡り」の場でも汎用的な武器として活用できています。
天才の眩しさを認めた上で、自分の「論理」を信じる。それが私の戦い方なのだと、アニメを見ながら気づかされます。
見えない基礎体力が人を支える
宮田のテクニックに翻弄されながらも一歩が倒れなかったのは、釣り船屋で鍛えた強靭な下半身があったからこそでしょう。
そこには「強さを知りたい」という気持ちだけでなく、母を思う気持ちの積み重ねも表れているように思います。
私にとっての「体力的な見えない土台」は、
中学・高校、そして社会人時代に続けてきた剣道にあります。
最近は少し足腰が弱った自覚もありますが(笑)、剣道の修行で得たものは技術だけではありません。最も大きな収穫は「相手の目を見て話すことが普通にできる」という点です。
これはどの武道にも共通すると思いますが、どんなに厳しい交渉の場でも、相手から目を逸らさずに誠実に向き合う。その姿勢が、エンジニアとしての言葉に重みと強さを与えてくれていると感じます。
失敗は人材育成のタイミング
初めての真剣勝負、初めての本番デプロイ。そこには独特の緊張感があります。
特にリーダーという立場になれば、部下の失敗も自分の責任へとつながる可能性もでてきます。でも私は失敗を過度に恐れたり、失敗した人を責めたりすることにあまり意味はないと考えています。
失敗は、その人にとっての「最高の成長タイミング」。それをどうカバーし、教訓に変えていくか。そのスリリングな積み重ねこそが、組織を強くし、会社の力になっていきます。
かつて指導した部下が、失敗を乗り越えて大きく成長した姿を目にする瞬間。それはリーダーとして、小躍りするほど嬉しい出来事にもなりますね。
例えば、以前担当していたプロジェクトで、ある若手エンジニアが本番リリース直前に重大な設定ミスをしてしまったことがあります。
当時は全員が冷や汗をかきましたが、彼はその経験をきっかけにチェック体制を徹底的に改善し、数年後にはチームの中心的存在になっています。
失敗を経験した人ほど、強いエンジニアに育つ。
私はその姿を何度も見てきました。
成功体験が努力を楽しくする
52歳になった今、改めて「努力」の正体について考えます。
努力とは、何かを成し遂げるために足りないものを身に付けるプロセス。それは時に「歯を食いしばる苦痛」でもあり、時に「時間を忘れるほどの夢中」でもあります。
しかし、その先にある「目標に到達した時の喜び」を一度でも知っている人は、努力を努力と思わなくなります。成功体験の味を知っているからこそ、その過程にある困難さえも、喜びへの前奏曲として楽しむことができる。
努力ができる人とは、未来の喜びを信じられる人のことなのかもしれません。
今回のまとめ
今回の記事では、『はじめの一歩』第2話のエピソードを手がかりに、現場で本当に役に立つ努力の形について考えてみました。
改めて整理すると、仕事の現場で力になるのは次のような要素だと感じています。
- 大きな課題を小さな到達点に分解する
- 天才ではなく、再現できる論理で考える
- 見えない基礎体力を積み重ねる
- 失敗を成長のタイミングとして活かす
- 成功体験が努力を続ける力になる
一歩が木の葉を掴むために続けた数千回のジャブも、決して特別な才能ではなく、こうした地道な積み重ねの結果ですよね。
天才ではない私たちにできるのは、目の前の課題を一つずつ分解し、失敗しながらも前に進み続けることだと思います。
仕事の現場で壁にぶつかったとき、この記事が「努力をどう積み重ねるか」を考える小さなヒントになれば嬉しく思います。


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