30年以上エンジニアを続けて実感した「努力の正体」|はじめの一歩第2話で考える

仕事の現場で「どう考えても無理だろう」と思える課題を突きつけられた経験、ないでしょうか。

私は30年以上エンジニアとして働いてきましたが、本当に力がつく瞬間というのは、そうした無理難題に向き合ったときに訪れるものだと感じています。納期の短縮や突然の仕様変更など、「本当に終わるのか」と頭を抱えた場面ほど、後になって大きな財産になっていました。

アニメ『はじめの一歩』第2話には、まさにその本質を象徴するエピソードがあります。鷹村守から課された「左ジャブだけで木の葉を掴む」という無謀な課題に、一歩は数千回の素振りで挑み続けました。

この記事ではこの第2話を見ながら、これまで現場で出会った無理難題や、そこで成長していった人たちの姿を思い出しました。今回はそんな経験も交えながら、「努力の正体」について考えてみたいと思います。

関連:問題解決できるエンジニアに共通する力とは|52歳の現場経験から考えた本当の強さ(はじめの一歩第1話)

無理難題を「小さな到達点」に分解する

仕事の現場でも、一見して「無理難題」と思えるような納期や技術的な課題を突きつけられる場合も多いと思います。しかも、それを突破しなければ目的地には辿り着けません。

そういう局面では「モチベーション」という言葉が出てきますが、あまり曖昧な言葉に寄りかからないようにしています。

まずは「やるしかない」と腹を括る。これは30年以上の現場で何度も繰り返してきたことです。その上で、目的地までの道のりに「細かい到達ポイント」を置いていきます。

一つひとつの小さなクリアを積み重ねることで、結果的にモチベーションを維持し続けるのです。

大きな問題ほど小さく分解

例えば私の仕事でも、数千人が利用するという規模の大きいなシステム更新のときは「全体完成」ではなく、「ログイン機能」「データ連携」「バックアップ」のように小さな達成ポイントを設定して進めてきました。

最初は終わりが見えず途方に暮れましたが、一つずつ完了していくことでチーム全体の不安も少しずつ減っていきました。

大きな問題ほど、小さく分解して進める。それが現場で身についた習慣です。

不条理さを嘆く前に、まずは「到達できる道」を模索する。この冷静な問題解決こそが、一歩が木の葉を一枚ずつ掴み取ったプロセスそのものだと思います。

天才ではなく再現性で勝つ

鴨川ジムには、圧倒的なセンスを持つ天才「宮田一郎」がいました。エンジニアの世界にも、努力を飛び越えて一瞬で正解に辿り着くような天才肌の人間が確かに存在します。

私自身は、自分は天才肌では全くなく、よく言えば「秀才肌」の部類だと自覚しています。つまり、すぐ物事を飲みこめるのではなく、地道な積み上げを行うことでしか、力を付けられないタイプです。

でも天才でないからこそ、私は「なぜそうなるのか」という論理力や推理力を徹底的に磨くことができたと思っています。実際に障害対応や原因調査では、感覚よりも一つずつ可能性を潰していく考え方に何度も助けられてきました。

感覚に頼らないからこそ、その思考法は再現性があり、ビジネスという「世渡り」の場でも汎用的な武器として活用できています。

天才の眩しさを認めた上で、自分の「論理」を信じる。それが私の戦い方なのだと、アニメを見ながら気づかされます。

見えない基礎体力が人を支える

宮田のテクニックに翻弄されながらも一歩が倒れなかったのは、釣り船屋で鍛えた強靭な下半身があったからこそでしょう。

そこには「強さを知りたい」という気持ちだけでなく、母を思う気持ちの積み重ねも表れているように思います。

私にとっての「体力的な見えない土台」は、
中学・高校、そして社会人時代に続けてきた剣道にあります。

最近は少し足腰が弱った自覚もありますが(笑)、剣道の修行で得たものは技術だけではありません。最も大きな収穫は「相手の目を見て話すことが普通にできる」という点です。顧客との厳しい打ち合わせや障害報告の場でも、この姿勢に何度も助けられてきました。

これはどの武道にも共通すると思いますが、どんなに厳しい交渉の場でも、相手から目を逸らさずに誠実に向き合う。その姿勢が、エンジニアとしての言葉に重みと強さを与えてくれていると感じます。

失敗は人材育成のタイミング

初めての真剣勝負、初めての本番デプロイ。そこには独特の緊張感があります。

特にリーダーという立場になれば、部下の失敗も自分の責任へとつながる可能性もでてきます。でも私は失敗を過度に恐れたり、失敗した人を責めたりすることにあまり意味はないと考えています。

失敗は、その人にとっての「最高の成長タイミング」。それをどうカバーし、教訓に変えていくか。そのスリリングな積み重ねこそが、組織を強くし、会社の力になっていきます。

かつて指導した部下が、失敗を乗り越えて大きく成長した姿を目にする瞬間。それはリーダーとして、小躍りするほど嬉しい出来事にもなりますね。

失敗したエンジニアが今やリーダーに

例えば、以前担当していたプロジェクトで、ある若手エンジニアが本番リリース直前に設定ファイルの更新漏れを起こし、システムが正常に起動しない状態になったことがあります。

当時は全員が冷や汗をかきましたが、彼はその経験をきっかけにチェックリストやレビュー手順を見直し、数年後にはチームの中心的存在になっています。自らレビュー役を買って出たり、同じ失敗をチーム全体で防ぐ仕組み作りにも取り組んでいました。

若い頃は失敗を避けようとする人ほど成長すると考えていましたが、実際には失敗と向き合った人の方が長い目で見ると大きく伸びる場面を数多く見てきました。

成功体験が努力を楽しくする

52歳になった今、改めて「努力」の正体について考えます。

努力とは、何かを成し遂げるために足りないものを身に付けるプロセス。それは時に「歯を食いしばる苦痛」でもあり、時に「時間を忘れるほどの夢中」でもあります。

振り返れば、剣道もエンジニアの仕事も、最初は苦しかったことが後になるほど面白く感じられるようになっていきました。

先にある「目標に到達した時の喜び」を一度でも知っている人は、努力を努力と思わなくなります。成功体験の味を知っているからこそ、その過程にある困難さえも、喜びへの前奏曲として楽しむことができる。

努力が続く人というのは、たぶんその先にある小さな手応えを、どこかで信じられる人なのだと思います。

今回のまとめ

今回の記事では、『はじめの一歩』第2話を手がかりに、現場で本当に力になる努力について考えてみました。

  • 大きな課題を小さく分けること。
  • 天才ではなく、自分なりの再現できる形を持つこと。
  • 失敗をそのまま終わらせず、次につなげること。

30年以上の現場を振り返ると、結局はこうした地味な積み重ねこそが、トラブル対応や人材育成の場面で最も頼りになる土台になっていました。

一歩の木の葉掴みも、派手さはなくても、強くなるために必要な時間だったのでしょうね。

仕事の中で「こんなの無理だろう」と思う場面に出会ったとき、私自身が何度も助けられてきたこうした積み重ね方を思い出してもらえたらと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました