組織で若手を潰す上司はなぜ生まれるのか|現場エンジニアが考えた二つのリーダー像

若手を活かす組織、つぶしてしまう組織の違いは何でしょうか。

私は会社組織で長く働き、現場エンジニアとして上司の判断やチームの空気が現場にどう影響するかを何度も見てきました。『Dr.STONE』第3話での司と千空の対立は、アニメの話にとどまらず、実際の職場で起きるリーダーのあり方の違いにも重なって見えます。

この記事では、私自身の現場経験を交えながら、二人のリーダー像が組織に何をもたらすのかを考えてみたいとお澪ます。職場でどんな上司が人を動かし、どんな組織が若手の力を伸ばせるのかを考えるヒントになればうれしいです。

関連:
原因不明の不具合調査を進める3つの考え方|開発現場とDr.STONE第2話の試行錯誤から

会社組織に潜む「司が憎んだ大人たち」

司は「石化した大人たち」を次々と破壊しながら「純粋な若者だけの世界」を目指します。彼が憎んだのは、「自分は動かず」「勉強もせず」「ただポジションという既得権益にしがみつく大人たち」でした。

実際のところ、会社組織という場所に長く身を置いていると、司が抱いたような憎しみを抱く若者の気持ちは痛いほど分かります。

私が40代の頃、若手エンジニアが新しい開発言語を提案したことがありました。でも会議では「今さら変える必要はない」と一蹴され、結局その技術は数年後に別の部署で導入されることになりました。

提案を一蹴された時の若手の表情を思い出すと、司の言葉が極端な思想としてだけではなく、現実の延長線にも見えてしまうのです。

その会議では、保守のしやすさや教育コストではなく、「前例がないから」という空気だけで話が止まっていたと思います。その時、技術の良し悪しよりも、「安心して提案し話せる場」があるかどうかが「組織の未来を左右する」のだと感じました。

若手が黙る職場は、技術ではなく空気で判断する職場になりやすいのだと思います。指示を出しても動かない、新しい技術を理解しようともしない、それでいて若者の芽を摘むような上司...

そこに「本人は迷惑だと思っていないのかもしれない」という、やるせなさが残ることもありますね。

「私はああはなりたくない」。

これまでそう思いながら働いてきた私にとって、司の過激な行動は、社会の不条理に対する一つの極端な回答のようにも映りました。

「元の世界」を信じ切れる千空の強さ

一方で千空は「全人類を救う」と断言します。

千空にとっての「全員救出」とは、単に人を生き返らせることではなく、石化前の「元の世界」を完全に復元することを意味しているのでしょう。

科学の力を使えば、たとえ世界が元に戻っても「何とでもなる」と千空は信じている。科学への絶対的な信頼があるからこそ、過去を切り捨てずに済むのです。

対して司は、元の世界では「どうにもならない」と諦めたからこそ、世界そのものを変えようとした。

エンジニアの世界でも、不具合があっても昔から使い続けているシステムを「もう一度磨き上げて使い続ける」のか「一から作り直す」のかという議論があります。

私自身も、古い社内システムを改修しながら延命するプロジェクトと、完全に作り直すプロジェクトの両方を経験してきました。

千空のスタンスは、かつての世界に対する強い愛着と、自らの技術への誇りに裏打ちされた「究極のマイグレーション」だと感じます。もう究極のエンジニアの意地みたいなものですね。

観点延命する改修完全に作り直す記事内で重なる人物
メリット既存資産を活かせる根本問題を断ちやすい千空 / 司
難しさ不具合を抱えやすいコストと混乱が大きい千空 / 司
判断に必要なもの蓄積された知識大きな決断力現場経験 / 強い思想

「論理」は、感情よりも気楽である

司のようなカリスマ的なパワープレイのリーダーと、千空のような徹底した論理性を持つリーダー。私がどちらと一緒にいて「気楽」かと問われれば、迷わず千空を選びます。

例えば、私が30代の頃に関わった社内システムの更新プロジェクトでは、感情的な叱責が多い上司の下で作業した時期がありました。仕様変更の理由が共有されないまま作業が振り回され、現場は常にピリピリした空気だったのを覚えています。

その後、論理的にタスクを分解して説明するタイプのリーダーのプロジェクトに移ったとき、同じ忙しさでも精神的な疲労がまったく違うと感じました。

違いを振り返ると、前者は「なぜ変えるのか」が見えず、後者は「何を、いつまでに、どの順番でやるのか」が先に示されていました。忙しさそのものより、先が読めるかどうかで疲労感は大きく変わります。

私はこの経験から、現場が安心して動けるかどうかは、優しさよりもまず説明の筋道で決まると思っています。

もし「不要な大人」と言われたら

もし司の目の前で「君のような大人は新世界にはいらない」と言われたらどうするか。

私が言われたとしたら「確かにそうかもね」と笑って、大人たちだけの小さなコミュニティで、のんびり隠居することを選択するでしょう。

実際、数年前に若手エンジニアが中心になって新しい開発環境を導入したとき、「このツールは分からないから任せるよ」と言って一歩引いたことがありました。

若いメンバーの方が圧倒的に詳しかったからなんですね。

「世代によって役割は変わるのだな」と、その時、妙に納得した記憶がありますが、ただ全部を任せて終わりにしたわけではありません。

運用面の注意点や、過去に社内でつまずいた導入手順は私のほうが知っていたので、若手が進めやすいように周辺の調整役に回りました。

新しい技術を先頭で触る役と、失敗しやすい場所を先回りして潰す役は別でいいのだと、その時に腹落ちしました。

若者は若者で、理想の新世界をガンガン作っていけばいい。それは余裕というよりも、その場の状況を客観的に見て「どう動くのが最も平穏か」を考える、エンジニア的な最適解の選択です。

まとめ|若手を活かす組織は、空気ではなく論理で動く

若手を活かす組織と、潰してしまう組織の違いは、結局のところ「空気で決まるか、論理で決まるか」なのかもしれません。

技術の話でも仕事の進め方でも、提案がきちんと議論される場所では人は成長していきます。逆に、前例や立場だけで決まる職場では、新しい挑戦は生まれにくいものです。

千空のように論理と手順で人を動かすリーダーの下で働く方が、現場はずっと気楽に動ける。そんなことを、この回を見ながら改めて感じました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました