原因不明の不具合調査や、終わりの見えないデバッグ。
エンジニアとして働いていると、「いつ終わるのか分からない作業」に心が折れそうになる場面があります。そんな状況で、どうやって前に進み続ければいいのか。
私は52歳の現役ITエンジニアとして30年以上現場で働いてきましたが、原因不明の不具合調査に何度も向き合ってきました。そんな経験があるからこそ、『Dr.STONE』第2話で描かれた試行錯誤の姿には、実際のデバッグと重なる部分を強く感じました。
この記事では、私の実体験も交えながら、長引く不具合調査で心が折れない3つの突破法をまとめます。原因が分からない調査で行き詰まったときのヒントになればうれしいです。
関連:第1話から見えたこと)
52歳ITエンジニアが読み解く「チーム開発の本質」|役割分担と積み上げの思考(Dr.STONE第1話)
「あと数回」が限界のデバッグを、何百回と繰り返す執念
原因不明の不具合調査では、最初の数回で答えが見つかることの方が少ないものです。現場では、仮説を立ててログを確認し、外れたら別の条件を試すという作業を繰り返しながら、少しずつ原因を絞っていきます。
5年前まで遡って問題解決
私自身も、夜間バッチが月に数回だけ停止する不具合を追ったことがあります。ログ上は大半が正常終了しているのに、ある入力データのときだけ処理が途中で止まっていました。
最終的には、特定の入力パターンでNULLチェックを通過してしまう条件分岐が原因だったのですが、その一行にたどり着くまで何十回も仮説検証を繰り返すことになりました。特に印象に残っているのは、3日間ほぼ徹夜に近い状態でログを追い続け、過去の仕様書を5年前まで遡って確認した経験です。
こうした経験を通して感じるのは、原因不明の不具合ほど「ひらめき」で解決することは少なく、消した可能性を丁寧に残した人が最後に勝つということです。だから私は長引く調査ほど「何を試して、何が違ったか」を記録する姿勢が大事だと考えています。
切り分けがどこまで進んだかで前進を測る
『Dr.STONE』第2話の試行錯誤の描写は、こうした現場の感覚とよく重なって見えます。進捗が見えないときほど、成功した回数ではなく、切り分けがどこまで進んだかで前進を測る方が実務では役に立ちます。
例えば、
- 再現する条件が1つ分かった
- 関係ないモジュールを切り分けられた
- 特定の入力パターンでは落ちないと確認できた
こうした形で「調査で消えた可能性」を数えていくと、作業の前進が見えやすくなります。
「終わりの見えない孤独」にどう折り合いをつけるか
この2話で描かれた最大の壁は「いつ終わるか分からない」という時間の重みです。千空たちは、結果として約1年(半年以上の実験)を費やしてようやく正解に辿り着きます。
事実を書き出す大切さ
以前、原因不明の停止が出た夜間バッチの調査を担当したことがありました。夕方からログを追い始めても手がかりが出ず、日付が変わる頃には「今日はもう進まないかもしれない」と気持ちが沈んだものです。
深夜のオフィスでログを追っていると、処理が正常終了している行が何百行も続き、その中にぽつんと異常終了が混ざっていることがあります。あの瞬間に「どこかに必ず原因があるはずだ」と思いながらログを戻していく感覚は、デバッグを経験した人ならよく分かると思います。
でも「この入力条件では落ちない」「この時刻の処理までは正常」と、一つずつ確認できた事実を書き出していくと、完全に前進が止まった感覚が薄れました。
この2話を見ていて強く重なったのは、まさにこの感覚です。
実際残した記録の例
実際の現場では、次のように記録を残すと調査が前に進みやすくなります。
| 記録する内容 | 具体例 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 再現条件 | 入力データ・実行時間・環境 | 不具合の発生パターンを特定できる |
| 試した仮説 | ログ追加・設定変更など | 同じ調査を繰り返さない |
| 正常ケース | 落ちなかった条件 | 切り分けを進める材料になる |
こうした形で、進んだ分だけ記録を残すと、作業が止まっている感覚を減らすことができます。私は長引く調査ほど、この方法を徹底するようにしています。
適材適所の分業が、デバッグを前に進める
不具合調査や障害対応では、ひとりで全部抱え込むより、役割を分けた方が早く前に進むことがあります。現場の開発でも、設計が得意な人、テストが得意な人、泥臭い調査が得意な人など、それぞれの強みがあります。
『Dr.STONE』第2話で描かれた千空と大樹の分業は、そうした実務の役割分担ともよく重なって見えました。
私自身、設計の整理が得意な人、検証条件を洗い出すのが速い人、障害時にログから異常の流れを拾うのが上手い人がそろった現場では、同じ人数でも進み方がまるで違うのを何度も見てきています。
1人作業を分業にして出口を見つける
ある金融システムの不具合調査で、私は「再現手順の特定」だけに特化し、残りのメンバーを「仮説検証」と「テスト設計」に割り振るという分業体制をとりました。
具体的には、私が調査の途中で気づいた「この入力パターンで事象が発生する」という要点を整理したメモ(Markdownの箇条書き程度)としてメンバーに共有しました。
これが転換点でした。
- 私: 再現性の高いテストケースを構築し、条件を絞り込む。
- A氏(改修担当): 私が渡したケースを基に、該当コードの条件分岐を特定・修正案を作成。
- B氏(テスト担当): 修正案に対して「この入力パターンならどうか?」と、検証の死角を突くテストを並列で実行。
これまで私は「ログ調査→コード分析→修正→テスト」のすべてを一人で抱えていたため、作業が直列(シリアル)になっていました。しかし、分業によってこれらが「並列(パラレル)」で回るようになったのです。
その結果、検証のサイクルが劇的に速まり、通常なら数か月単位でズルズルと引きずりそうな調査が、プロジェクト全体として1か月以上の短縮につながりました。
「分業」とは単に人数を増やすことではなく、「調査の解像度を上げて、専門的な役割にタスクをパスすること」だと、この時改めて実感しました。
この2話の分業は、きれいごとではなく、現場で本当に効く戦術だと思います。
まとめ|「前進の単位」を小さくする
私は今、「残りの人生は気楽に生きたい」と考えています。ただ、この2話を見て改めて思ったのは、気楽に働くことは、楽をすることとは違うということでした。
開発の現場で本当に苦しいのは、
手を動かしている時より、正解を探しすぎて動けなくなる時です。
出口が見えない不具合調査では、次のように「前進の単位」を小さくすると作業を続けやすくなります。
| 手順 | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 仮説を立てる | 原因の候補を1つ決める | 調査の方向を絞る |
| 検証する | テスト・ログ確認 | 仮説が正しいか確認 |
| 結果を記録 | 試した内容を書く | 同じ調査を繰り返さない |
この2話の価値は、努力は大事だという精神論ではなく、終わりの見えない作業では「前進の単位を小さくすること」が武器になると教えてくれる点にあります。
私は長年現場でこの方法を繰り返し使ってきました。52歳になった今でも、原因不明の不具合に直面したときは「今日1つでも前進できれば十分」と自分に言い聞かせています。


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