担当変更で、長く担当していた仕事を後輩へ引き継いだことがあります。
最初はよく声をかけていましたが、質問が減ってくると「もう大丈夫そうだな」と思い、少しずつ距離を取るようになりました。でも、その判断をあとから見直すことになります。
引き継ぎ後にどこまで任せてよいのか、質問が減ったときに何を見ればよいのか。引き継ぎを「説明したら終わり」にしないために、任せる前に何を確認しておくべきかを、私の経験を交えてお伝えします。
後継機種の担当を後輩へ引き継いだ
当時、私が担当していたのは、同じ系統の機種を継続して開発していく仕事でした。仮に、それまで私が機種Aを担当していたとします。
次に後継となる機種Bを開発することになったとき、私はその担当を離れ、新しい分野へ移ることになりました。そこで、それまで持っていた担当範囲を後輩へ引き継ぎました。
後継機種なので、まったく別のものを一から作るわけではありません。これまでに作ってきた機能や仕様を理解し、その上へ新しい機能を追加していきます。機種を重ねるごとに機能は増え、技術的にも深くなっていく仕事でした。
そのため、後輩にはこれまでの機能や仕様を中心に引き継ぎました。後輩にとっては、それまで担当していた分野より技術的な範囲がかなり広くなります。
それまでの経験から理解も早く、上司も問題ないとして担当に付けたという背景があります。ただ、新しい知識やこれまでと異なる開発メンバーとの関係もあり、慣れるまでは少し心配だな、と思ってました。
そのため、担当を渡して終わりにはせず、最初のうちは近くを通るたびに、
「何か分からないところある?」
「何かやりづらいことってある?」
など、声をかけるようにしていました。
質問が減り「もう大丈夫」と思った
分からないところや技術的に難しいところがあれば相談に乗る。そんな状態をしばらく続けました。ただ、いつまでも私が横から口を出しているのも違うと思っていました。
いずれは後輩自身が担当する仕事です。何でもこちらが答えていたら、自分で考える機会まで奪ってしまうかもしれません。
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そんなことを考えている内に、しばらくすると後輩からの質問も減ってきました。私から見える範囲では仕事が止まっている様子もなく、配下メンバーとも仕事を進めているように見えていました。
私は、「質問が減った」「仕事も止まっていないように見える」という表面上の様子だけで、「そろそろ大丈夫そうだな」と判断していました。
ちょうど私自身も新しい担当が忙しくなっていたこともあり、以前ほど頻繁には様子を見に行かなくなりました。
でも後から振り返ると、質問が減ったことを、そのまま「もう困っていない」と受け取っていたんですね。
後輩はとても真面目な人でした。ただ、なぜ質問が減ったのかを本人に確認したわけではないので、本当の理由は分かりません。
分からないことをまず自分で何とかしようとしていたのかもしれませんし、私が忙しそうにしているのを見て遠慮していた可能性もあります。
少なくとも当時の私は、質問が来ない背景まで考えず、「質問がないなら大丈夫だろう」と判断していました。
体調を崩したと知って考え直した
しばらくすると、私はほとんど相談に乗らない状態になっていました。
私自身はすでに別の分野を担当していましたし、その機種にはリーダーもいました。本来、日常的な状況や負荷を見るのは、そのリーダーの役割でもあります。
そんな中で、後輩が体調を崩し、2、3日会社を休んでいると知りました。その原因が仕事の負荷だったのかどうかは分かりませんが、その話を聞いた瞬間、
「もっと頻繁に様子を見に行っていれば」
という後悔が走りました。
引き継いだ機種には、技術的に難しいところもたくさんあります。それまでより広い担当を持ち、過去の仕様を理解しながら新しい機能にも対応しなければなりません。
一人で抱えていたものもあったのかもしれません。
もちろん、私が声をかけ続けていれば何かが変わった、とまでは言えません。でも、少なくとも「質問が来ないから大丈夫だろう」という見方は甘かったと思いました。
私は仕様や機能を説明し、最初のうちは相談にも乗っていました。それで引き継ぎはある程度できたつもりになっていたんですね。
実際には、担当を渡したあと、その人が無理なく仕事を進められているかを見ることも必要だったのだと思います。この出来事から、そう考えるようになりました。
その後は引き継ぎ後の関わり方を変えた
それ以降、別の担当を引き継ぐときは、やり方を少し変えました。
質問を待たずに様子を見る
一番変わったのは、相手から質問が来るのを待たなくなったことです。
質問がなくても、こちらから定期的に声をかけるようにしました。必要なら、そのチームの打ち合わせにも参加し、質問の数だけではなく、仕事が止まっていないか、判断に迷っているところがないか、周囲との調整で困っていないかを見るようにしました。
もちろん、いつまでも前任者が横から細かく口を出していたら、新しい担当者もやりにくいでしょう。任せるところは任せる。でも、質問がないという理由だけで完全には離れない。
以前の経験から、その距離を意識するようになりました。
サブリーダーから段階的に引き継ぐ
別の引き継ぎでは、いきなり担当を全部渡さない方法も取りました。まず、次に担当してもらう人にサブリーダーとして入ってもらいます。
私がリーダーとして担当している間に、同じ機種を一緒に経験してもらい、次の機種ではその人にリーダーになってもらう形です。
こうすると、仕様書だけでは伝わりにくい部分も、実際の開発の中で経験してもらえます。
どこで判断が必要になるのか。どこが技術的に難しいのか。どんな場面で他のメンバーとの調整が必要になるのか。そういうことは、説明だけより一緒に担当した方が伝わりやすいと思いました。
人員やスケジュールの都合で、いつでもこの方法が取れるわけではありません。
それでも可能であれば、一度サブリーダーとして経験してもらってから次を任せる。その方が、いきなり担当範囲を渡すより安心できます。
以前の私は、「必要なことを伝えたか」を引き継ぎの基準にしていました。
その後は、「後任者が一人で担当できる状態まで移れたか」を見るようになりました。
まとめ
後輩への引き継ぎで、私は質問が減ったことを「順調に進んでいる」と受け取っていました。
でも、質問がないことと、困っていないことは同じではありませんでした。
それからは、引き継いだあとも定期的に様子を見たり、可能ならサブリーダーとして一緒に経験してもらってから次を任せたりするようになりました。
私にとっては、説明して終わりではなく、その後まで見ることも引き継ぎの一部だったと考え直した出来事です。


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