納期直前に判断を止める兆候|夜中に手が震えた現場経験

夜中のオフィスで、画面を見ながら手が少し震えていました。

納期まで残り数日。修正した処理を反映してよいのか、同じ箇所を何度見ても答えが出ません。それでも当時の私は、まだ冷静に判断できていると思い込んでいました。

今振り返ると、危なかったのは、確認しているつもりで実際には判断材料がほとんど増えていなかったことでした。

この記事では、同じ箇所を見続ける、根拠が「たぶん大丈夫」になるといった判断を止める兆候と、画面から離れた後に確認方法をどう変えたのかを書いています。納期直前に作業を続けてよい状態か、いったん止めるべきかを考えるための目安も整理しました。

夜中のオフィスで判断が止まっていた

今でも忘れられないのは、納期まで数日しかなかった夜のことです。

蛍光灯の白い光がついたままのオフィスで、机にはコーヒーの空きカップが並んでいました。普段なら雑談をするメンバーも、その夜はほとんど話しません。周囲から聞こえるのは、キーボードをたたく音と、ときどき漏れるため息だけでした。

私は画面を見ながら、修正した処理をそのまま反映してよいのか迷っていました。

「たぶん大丈夫だろう」
「いや、でも見落としがあるかもしれない」
「でもここで止めたら、さらに遅れる」

同じ考えが頭の中を何度も回ります。処理を確認しているつもりでしたが、実際には同じ箇所を繰り返し見ているだけでした。

何度も読み直しているのに、新しく確認できたことは増えていません。それでも画面を見続けているため、自分では慎重に作業しているつもりになっていました。

気づくとマウスを持つ手が少し震えていました。喉が乾き、背中に汗が流れているのも分かります。失敗すれば、自分だけでなくチーム全体に迷惑がかかる。その考えが頭から離れませんでした。

納期が迫ると、確認のために手を止めることまで、遅れを広げているように思えてきます。当時の私は、立ち止まって考え直すより、画面を見続けて作業を進める方が責任ある行動だと思い込んでいました。

ところが、何度見直しても新しく確認できたことは増えません。判断の根拠として頭に浮かぶのも、いつの間にか「たぶん大丈夫」という言葉だけになっていました。

今は、同じ場所を見続けても判断材料が増えず、技術的な根拠より「早く終わらせたい」という気持ちが強くなったときは、そのまま作業を続けないようにしています。

画面から離れて気づいた更新順序の危険

そのまま作業を続けても、確認は前へ進みませんでした。

そこで一度、席を立ちました。

冷静な判断で休憩を取ったというより、もう画面を見続けるのが苦しくなり、給湯室まで歩いて水を飲んだという方が近いです。離れていたのは数分だけでした。

席へ戻ったとき、先ほどと同じ箇所から確認を始めるのはやめました。

修正した処理だけを見るのではなく、その前後でデータがどのように動くのかを追い直しました。そこで、先ほどまで見えていなかった違和感に気づきます。

問題がありそうだったのは、修正した処理そのものではありません。その前後にある、データを更新する順番でした。

私は「この処理が単独で正しく動くか」ばかりを確認していましたが、処理の前後まで確認すると、更新される順序によって別の処理へ影響が残る可能性があると分かりました。

数分間画面から離れたから、急に技術力が上がったわけではありません。同じ見方を繰り返すのをやめたことで、確認する範囲を変えられたのだと思います。

それまでの私は、確認回数を増やせば見落としを減らせると考えていましたが、疲労や焦りが強い状態では、同じ見方のまま回数だけを増やしてしまうことがあります。

判断に詰まったときは、確認回数を増やすより、確認する範囲や順番を変える方が重要な場合があります。

作業へ戻る前に確認する4項目

この経験以降、画面から離れた後は、何となく作業を再開しないようにしています。

同じ箇所をもう一度読むのではなく、確認方法そのものを変えます。現在、作業へ戻る前に見ているのは次の4項目です。

  • 修正した処理の前後で、どのデータが変わるか
  • 処理の順番が変わった場合、別の機能へ影響しないか
  • 正常に動く場合だけでなく、途中で失敗した場合に何が残るか
  • なぜ進めてよいと考えたのかを、自分の言葉で説明できるか

以前の私は、同じコードや画面を何度も見れば、いつか確信が持てると思っていました。しかし、見直す回数だけが増えても、確認の中身が変わっていなければ、判断材料は増えていません。

今は、何回見直したかよりも、何が新しく分かったかを意識しています。

たとえば、修正した処理が単独で正しく動くことを確認できても、前後の処理や失敗時の状態まで確認できていなければ、まだ実行を判断する材料はそろっていません。

一方で、不安だからという理由だけで確認を続けることもあります。その場合も、「次は何を確かめるのか」を決められなければ、同じ場所を見るだけになってしまいます。

作業へ戻るのは、少なくとも確認済みの内容と未確認の内容を区別でき、進める理由を言葉にできる状態になってからです。

すべての不安がなくなるわけではありませんが、それでも、何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかを整理できれば、焦りだけで決めるのを避けやすくなります。

私が判断を止める7つの兆候

納期直前に次の状態になったら、私はすぐに反映や決定をしないようにしています。

  • 同じ箇所を繰り返し見ている
  • 読み直しても、確認できたことが増えていない
  • 根拠が「たぶん大丈夫」になっている
  • 実行しない理由より、遅れる怖さばかり考えている
  • 変更内容や安全だと考えた理由を説明できない
  • 次に何を確認すればよいか分からなくなっている
  • 手の震えや喉の渇きなど、普段と違う状態が出ている

これは、すべてに当てはまらなければ進めてよいという診断表ではありません。私自身が、判断を止めるために使っている目安です。

特に注意しているのは、「何度も確認しているから慎重に判断できている」と思い込まないこと。同じ箇所を見続けるだけでは、確認回数は増えても判断材料は増えません。

兆候に気づいたときは、いったん画面から視線を外し、戻った後は同じ場所から読み直さないようにします。「処理の前後を見る」、「データの動きを順番に追う」、「途中で失敗した場合を考える」など、確認方法を変えます。

それでも判断できない場合は、その状態で実行しないことも必要です。

数分離れれば必ず判断力が戻るわけではありません。疲労が強い場合は、短い中断だけでは足りないこともあります。

私も、納期が迫れば今でも焦ります。ただ、以前と違うのは、焦ったまま作業を続けるのではなく、「確認できたことは増えているか」「今の状態で判断してよいか」を一度確かめるようになったことです。

特に影響の大きい変更では、修正内容に問題がないかだけでなく、自分が冷静に確認できている状態かも確かめるようにしています。

まとめ

あの夜、私は同じ箇所を何度も見直しながら、慎重に確認しているつもりになっていました。しかし、実際には判断材料が増えないまま、「たぶん大丈夫」と進める理由を探していました。

画面から離れ、修正した処理だけでなく、その前後のデータ更新まで確認したことで、同じ見方を繰り返していたことに気づきました。

現在は、確認回数ではなく、新しく判断できたことが増えているかを見ています。同じ箇所を見続け、次に何を確認するべきか分からなくなった場合は、その状態で反映や決定を行いません。

納期が迫っていても、判断材料が増えていないなら、画面を見続けることが前進とは限りません。自分の状態を確かめ、確認する範囲や順番を変えることが、あの夜の経験から得た判断基準です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました