37歳のサラリーマンが、異世界で最弱の「スライム」に転生する。
そんな突拍子もない物語から始まる『転生したらスライムだった件(転スラ)』ですが、その中身を覗いてみると、現代の私たちが直面している「組織への適応」や「スキル習得」への深い示唆に満ちていることに気づかされます。
現代に現れた「大賢者」という名のAI
スライムに転生した主人公、後に「リムル」の名で活躍しますが、その彼を影から支え、あらゆる問いに答えてくれるのがユニークスキル「大賢者」。
異世界のファンタジーだと思って見ていたこの存在が、今や私たちの現実にも現れています。そう、GeminiやChatGPTといった生成AIの登場です。
私たちは今、全人類が「大賢者」をインストールできる時代に突入しています。分からないことを瞬時に解析し、プログラミングのコードを書き、新しい視点を提供してくれる。これほど羨ましいスキルが、指先一つで使えるようになったのです。
しかし、この強力なスキルも、使わなければ宝の持ち腐れ。
大賢者のアドバイスを使いこなすリムルと、ただのスライムのまま終わる者。この差は、少なくとも私の周囲では、「AIを使うかどうか」で体感の差として表れてきているように感じます。
私はこの「現実世界の大賢者」と対話を続け、その進化に遅れを取らないようにしたいと考えています。
合併という名の「組織OS」の載せ替え
でも、どれほど強力なスキルを持っていても、環境(システム)が変われば苦労は絶えません。リムルが「人間」から「スライム」へとOSを強制的に載せ替えられたように、私も会社同士の合併によって、働く環境が激変する経験をしました。
それまでの私の会社は、今から思えば非常に自由な「OS」で動いていました。誰もが自由に発言でき、仕事のスタイルも個人に任される裁量が大きかったと思います。でも合併相手の会社は、まさに「管理された組織」で、上からの指示を待ち、降りてきたタスクを完璧にこなそうと動きます。
この「文化(OS)」の違いは、想像以上に深刻でした。どちらが良い悪いではなく、根本的な「動き方」が違うため、お互いが慣れるまでに膨大な時間を要しました。
異世界に転生して体の動かし方を一から覚えるリムルのように、私自身、環境が変わったときには、それまでの成功体験を一度見直す必要があると感じた場面がありました。
交渉のテーブルで「魔力」を感じ取る
そうした新しい環境(OS)の中で生き抜くために、私が頼りにしてきたのが、リムルが持つ「魔力感知」に近い感覚です。
視覚を失ったリムルは、周囲の魔力の流れを読む「魔力感知」によって世界を把握します。エンジニアとしてコードを追うのも大切ですが、キャリアを重ねて交渉の場が増えるにつれ、私も一種の「感知能力」を磨いてきたように思います。
会議室のテーブルに座り、相手と対峙する。交わされる言葉の端々、視線の動き、沈黙の長さ。それらを総合的に捉えることで、「このあたりが落としどころになりそうだ」というポイントが、理屈ではなく感覚として浮かび上がってくることがあります。
これは1行ずつのコード(論理)を追う作業ではなく、プロジェクト全体の「空気感」を抽象化して捉える作業です。
私の場合でいえば、スライムという弱小な存在でありながら最強の龍と対等に話せたリムルのように、「相手の意図」を意識することで、状況が少し読みやすくなったと感じる場面がありました。
最強の龍と対等になれた「開き直り」の力
最後に、ここは実はよく考えればとても気になる、”なぜ最弱のスライムが世界の破壊神とも言われる「暴風竜ヴェルドラ」と友達になれたのか”について。
第一話を見終わった後に考えてみましたが、そこには、究極の「開き直り」があったのでは?と感じます。
転生前は、後輩から頼れるサラリーマンだった主人公。でも気づけば目も見えない一匹のスライムとなってました。この極端すぎる環境の変化が、「失うものなど何もない」という境地を彼に与えたのでしょう。
仕事の現場でも、相手を「雲の上の存在」と神格化しすぎると、対等な対話はできません。でも、転スラを思い出し、もし気後れしてしまったら心の中で「自分はスライムだ」と開き直ってみる。
肩の力を抜いたときに、相手との距離が少し縮まったと感じた経験は、私自身にもありました。
転スラ 第1話のまとめ
最弱のスライムが、最強の知恵(大賢者)と、最強の友人(ヴェルドラ)を手に入れた第1話。そこには、技術への好奇心と、人との向き合い方のエッセンスが詰まっていました。
次回は、スライムの体が持つ「捕食」という機能について。何でも取り込み、自分のものにするその姿勢から、私の「学び直し」のスタイルについて語ってみたいと思います。


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