アニメ『Dr.STONE』5話|「強制リセット」の後の歩き方。48歳で会社を辞めた私が見た、千空の半年間

文明が滅び、全人類が石化した世界。
そこでたった一人、3700年の時を経て目覚めた千空。

第5話で描かれた彼の「孤独な半年間」の回想は、単なるサバイバル記録ではありません。それは、エンジニアリングの根源にある「知的好奇心」と、避けられない「世代交代」の理(ことわり)を私たちに突きつけているように思えます。

関連)第4話はこちら:
アニメ『Dr.STONE』4話|「背水の陣」の決断と、デスマーチを乗り越える「一呼吸」の極意

0.1秒の迷いもない「アイデンティティ」の守り方

この5話で、武力で支配しようとする司は、千空にこう迫ります。「科学を捨てれば、君を殺さずに済む」と。

でも千空は0.1秒も迷わずにそれを拒絶。

まさに「魂を売れ」「利益を取れ」みたいな問いかけですが、実際、現代の日常生活で「魂を売るか否か」という究極の選択を迫られることは滅多にありません。

せいぜい、夕食のおかずの量を自分だけ少し多く盛るような、ささやかな「利への流され方」を経験する人が大半ではないでしょうか。ただ人生には時として「その後の歩みを決定づける大きな分岐点」が現れるものです。

若い頃の私は、失うものなど何もないという意識で、自分の考えをどこまでも押し通してきました。ですが、守るべき家族や組織(部下など)が増えたとき、人はその「誇り」を一時的に封印してでも、平穏に従う道を選ぶことがあります。

それは決して逃げではなく、一つの「守るための決断」なのでしょう。それでも千空の姿を見て私は思うのです。

自分を自分たらしめている「核」の部分、私で言えばエンジニアとしての誠実さだけは、どんな状況でも差し出してはいけないのだと。

自分が「将来の負債」になる前に身を引く決断

この第5話で最も衝撃的なのは、司の決断です。

彼は千空という「個人」を愛しながらも、千空が復活させるであろう「科学文明」が再び格差社会を生むことを恐れ、その芽を摘むために千空を亡き者にする道を選びます。

この「将来のリスクを排除する」という非情なロジックに、私は今の自分を重ねずにはいられません。

実は私は、48歳の時に会社を引退しました。長年抱いていた「50歳までには後輩に道を譲りたい」という思いを実行に移したのです。

かつての右肩上がりの時代とは違い、今は昇進ポストが限られています。部下は優秀ですが、私がその椅子に座り続けている限り、彼らが次のステップへ進む道は塞がれたままになってしまいます。

自分が組織において「停滞を招く負債」になるのではないか。その恐怖と向き合った末の、フリーランスへの転身でした。司が千空を排除したのとは形こそ違いますが、「次の世代のために、今ある強者が身を引く」という判断の重みは、痛いほど理解できるのです。

孤独なデバッグを支える「楽しさ」の正体

千空が目覚めてからの半年間。火を起こし、住処を作り、衣食住をゼロから構築する日々は、気が遠くなるような孤独なデバッグ作業の連続です。

私にも似たような記憶があります。若く情熱に溢れていた時代、周囲からは「大した価値がない」と思われているようなニッチな技術に没頭したことがありました。

最新の論文を読み漁り、プログラムを組み、視覚化しては調整を繰り返す毎日。休日の概念もなく、深夜までオフィスにこもっていましたが、少しも苦しくはなかったのです。

周囲がどう評価しようと関係ありません。自分の中の「なぜだろう?」「必ずこうなるはずだ」という知的好奇心が満たされる瞬間の快感。千空も、孤独で死にそうな思いをしながらも、目の前の事象が科学の法則通りに動くことに、えも言われぬ興奮を覚えていたはずです。

この「孤独なデバッグ」を楽しめるかどうかが、プロフェッショナルの境界線なのだと改めて感じました。

チームという名の「不合理なバッファ」

千空は後に体力担当の大樹を目覚めさせ、生存率を劇的に上げました。一人でいればリスクは自分だけで完結しますが、仲間がいれば守らなければならない「コスト」が発生します。

現在、私はフリーランスとして活動していますが、外部のサポートメンバーに助けられることが多くあります。彼らは単なるリソースではありません。私が指示を間違えれば的確に指摘してくれ、私が体調が悪そうなときはそっと気づかってくれます。

論理だけで考えれば、外注は契約通りのアウトプットを出せば十分かもしれません。しかし、そこに「人」が介在することで、数値化できない力が生まれます。その「頑張ろう」と思える心の余白こそが、孤独なエンジニアにとって最大のバッファ(緩衝材)になるのです。

もし、すべてを失う「強制リセット」が起きたら

千空は司によって命を絶たれる寸前まで追い込まれました。もし私のこれまでのキャリアや資産が一瞬で白紙になるような「強制リセット」が起きたらどうするか、と考えてみました。

正直なところ、最初の半年や1年は、魂が抜けたようにぼーっと過ごすことになるでしょう。ショックを消化するには、それだけの時間が必要なはずです。

ですが、私は知っています。
自分がまた、何かに興味を持って動き出すことを。

今の時代であれば幸いにもPCがあり、AIという果てしない荒野が広がっています。体力と気力が許す限り、私は再び画面を開き、進化し続けるAIの世界に没頭することになるでしょう。

千空が石化した3700年を秒単位で数え続け、目覚めた瞬間に「100億%生き延びてやる」と確信したように、エンジニアとしての本能は、リセットされた場所からしか見えない景色を、また探し始めるに違いありません。

第5話の振り返り:Dr.STONE編を終えて

Dr.STONE編の5記事を通じて見えてきたのは、科学という論理の力と、それを扱う人間の「納得感」の重要性でした。

次からは、少し肩の力を抜いて『とんでもスキルで異世界放浪メシ』の世界へ。 効率を求めるエンジニアが、あえて「戦わずに気楽に生きる」という選択をどう見るのか。私の新しい一面を綴っていきたいと思います。

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