極限状況で人はどう判断するのか|エンジニア経験から考えるチームの役割

もしあなたが、開発現場で「納期に追われるプレッシャー」や「チームの役割バランス」に悩んだことがあるなら、『Dr.STONE』第4話の描写は、かなり経験と重なって見えるかもしれません。

「納期に追われる極限状態」「チームの役割バランス」「焦りの中での判断」。エンジニアとして長く働いてきた身から見ると、この回には現場のリアルに通じる場面がいくつも出てきます。

この記事では、30年以上開発現場に関わってきた52歳エンジニアの視点から、極限状態での判断、チームの役割バランス、そしてデスマーチの乗り越え方について、『Dr.STONE』第4話のシーンと重ねながら考えてみます。

開発現場で似たようなプレッシャーに直面したとき、どう考えて動けばいいかの参考になりましたら嬉しいです。

関連:二つのリーダー像についての記事はこちら(第三話)
組織で若手を潰す上司はなぜ生まれるのか|現場エンジニアが考えた二つのリーダー像

事業家的センスを感じる「背水の陣」の狼煙

物語の山場は、司に居場所を特定されるリスクを承知で、仲間を探すために「狼煙」をあげるシーン。

現代の組織で働く人間にとって、これほどの「背水の陣」を敷く機会はそうありません。というのも、何かあれば周囲に相談し、根回しをしてから決断するのが組織人の常だと思うからです。

でもストーンワールドには相談相手は皆無。
生きるか死ぬか、その一瞬の判断がすべてを決めます。

千空は論理的な科学者ですが、このシーンで見せたのは「リスクを飲み込んで未来を掴みに行く事業家」としての決断力でした。

この強さこそが、過酷な世界を生き抜くリーダーの条件なのでしょう。

論理・力、そこに「緻密さ」という最強のピース

今回、これまで男性二人だったところに、女性の杠(ゆずりは)が目覚めたことで、チームのバランスが劇的に変化します。

論理的すぎて冷徹に見えることもある千空、愚直すぎて後先を考えない大樹。この二人の「バッサリとした判断」を、杠の持つ「緻密さ(丁寧な作業や配慮)」が繋ぎ止めます。

実際の開発現場でも、似た構図をよく見ます。
設計が得意な人、実装が速い人、そしてドキュメントや調整を丁寧に進める人。

昔関わったプロジェクトでも、仕様をきちんと整理してくれる人が一人いるだけで、チームの空気が驚くほど安定したことがありました。それまで「誰が何を決めたのか分からない」状態だった設計が、その人のドキュメント整理で一気に可視化され、会議の時間が半分以下になったこともあります。

杠というピースが加わったこの3人組は、組織論として見ても「最強のユニット」になってますね。

ツールよりも、人の心が怖いと思った話

千空たちが挑むのは、身を守るための「火薬」作り。

殺傷能力のある技術を扱うことへの是非はありますが、結局、技術そのものよりも、それをどう使うかの方が怖いんだろうなと思いました。

実は、これに近い感覚を覚えたことがあります。

私がまだ現場で開発をしていた頃、あるプロジェクトで「ユーザーの操作ログを細かく取得する機能」を実装したことがありました。

例えば「どの画面を何秒見ていたか」「どのボタンを何回押したか」まで追えるログだったため、便利さと同時に「これは使い方を誤ると怖いな」という感覚が強く残りました。

便利なツールほど、使い方次第で別の意味を持ってしまう。あの時感じた違和感、少し怖くなった気持ちは、今回の火薬の話と似ていました。

技術そのものは善でも悪でもない。
でも、それを扱う人間の判断次第で、いくらでも性格を変えてしまう。

だからこそ、作り手側がその危うさを理解しておくことは大事だな、と改めて感じました。

デスマーチの空気と「一呼吸」を思い出す瞬間

「司が来る前に火薬を完成させろ」という状況は、まさに開発現場の「デスマーチ」そのものです。徹夜続きで休日もなく、迫りくる納期の足音が聞こえる中での作業。

(話の中では、司がやってくることが「納期」みたいなもの)

そんな極限状態って、追い詰められるほど手が震える感じも含め、過去の現場の空気を思い出させます。

特に覚えているのは、夜中のオフィス。

夜中のオフィスは、昼間とはまったく空気が異なり、蛍光灯の白い光の下で、コーヒーだけがどんどん減っていく。気がつけば外は真っ暗で、時間の感覚だけが曖昧になっていきます。

キーボードの音だけが静かなフロアに響いて、誰も余計なことを話さない。

納期まで残り数日、そして最終日は、あと何時間と時計を見る回数だけが増えていく、あの独特の空気。

この感覚は、何年経っても身体が覚えているものです。

私の場合、こうした時に意識するのは「いったん呼吸を整える」こと。深呼吸というより「焦りを一拍置く」みたいな感じです。

いざという時の自分の癖みたいなもので、もちろん万能ではないですが、あのシーンを見て思い出しました。

まとめ|感覚ではなく論理で伝える

以前、プロジェクトの仕様を巡って意見が対立したことがあります。当時の私はまだ若く、感覚的に「これは危ない設計だ」と思っても、うまく説明できませんでした。

会議の場では言葉にできず、「大丈夫だろう」という空気のまま、その仕様は採用されましたが、やはり後になってトラブルが起きました。

この経験から、感覚だけでなく「論理で説明できる準備」をしておく大切さを学びました。主張を通す力というのは、声の大きさではなく、積み重ねた理解の量なのだと思います。

「気楽」とは何もしないことではありません。
自分の信じる道を守るために、普段から準備をしておくこと。

千空たちの「戦うための科学」を見ながら、そんな自分の仕事の姿勢を思い出していました。

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