仕事の現場で本当に求められる「強さ」とは何でしょうか。私はITエンジニアとして30年以上仕事をしてきましたが、現場で必要とされる強さは、単なる技術力だけではないと感じています。
『はじめの一歩』第1話で主人公が投げかけた「強いって、一体どんな気持ちですか?」という問いは、技術者として働く私にも強く響きました。
この記事では、この第1話をきっかけに、私自身の現場経験を交えながら、問題解決できるエンジニアに共通する考え方や行動を整理してみます。
技術だけでは前に進めないと感じている方にとって、問題解決できるエンジニアに共通する考え方を整理するヒントになればうれしいです。
表面的なスキルを超えた本当の「強さ」
例えば、私が40代の頃、ある業務システムの改善を任されたことがありました。
担当部署の方から最初に聞いた要望は「処理を早くしてほしい」という一言。でも実際に現場で話を聞くと、本当に困っていたのは「毎日同じ入力作業を30分以上繰り返していること」だったのです。
そこで処理速度の改善ではなく、入力を自動化する仕組みを提案しました。結果として作業時間はほぼゼロになり、担当者の方から「こんなに楽になるとは思わなかった」と言われたことがあります。
後から分かりましたが、担当部署の方自身も「何に困っているのか」をうまく言葉にできていなかったようです。目の前では処理の遅さが気になっていても、実際には毎日の繰り返し作業そのものが負担になっていたようですね。
この経験から、要望をそのまま受け取るだけではなく、現場の流れまで見て初めて本当の課題が見えるのだと学びました。
私にとってエンジニアの「強さ」とは、
こうした“本当の困りごと”を見つけて解決する力だと感じています。
とすると、本当の強さとは、問題を解決したいと願う「人の気持ち」に寄り添い、その想いに応える解決策を提示できる能力のことになるでしょうか。
ただ動くものを作るのではなく、相手の心にある「不」を取り除く。その深さこそが、エンジニアとしての真の強さと思うのです。
「環境」が育てた武器
一歩は家業の釣り船屋で重い荷物を運び、不安定な船の上で踏ん張ることで、知らず知らずのうちにボクサーとしての強靭な下地を身につけていました。
エンジニアリングにおいても、一見無関係な「過去の環境」が大きな武器になることがあります。私の場合、それは「コミュニケーション能力」でした。
例えば、以前関わったプロジェクトで、システム担当と現場担当の意見が大きく食い違ったことがありました。技術的には正しい設計でも、現場の担当者からは「それでは作業が回らない」と強く反対されたのです。
そこで実際の作業現場に数日通い、どのタイミングで入力し、どこでミスが起きるのかを観察しました。その結果、システムの仕様を少し変更するだけで、現場の負担が大きく減ることが分かりました。
例えば、入力の順番を現場の作業手順に合わせるだけでも、確認のための往復が減り、ミスも起きにくくなります。大きな機能追加をしなくても、現場の流れに合わせた小さな修正が、結果として一番効くことがあると、このケースから分かりました。
この経験から、エンジニアにとってコミュニケーションは「補助スキル」ではなく、問題解決そのものだと考えるようになってます。
意外に思われるかもしれませんが、こうした相手の気持ちを察し、寄り添う力は、最適なシステム設計に直結しますし、机に向かっているだけでは身につきません。
人と話さざるを得ない環境、多様な価値観に触れる環境に身を置いてきたことが、結果として「良い問題解決」を提示できる今の私の強みになっています。
「思考の次元」が違う人たち
一歩が鷹村守というプロの圧倒的な力に衝撃を受けたように、私も学生時代、二人の友人に「この人たちには到底勝てない」という衝撃を受けました。
彼らは決してガリ勉というタイプではありませんでした。しかし、先生との受け答えや、物事の捉え方そのものが、一般の生徒とは明らかに次元が違ったのです。
例えば、ある授業で先生が難しい数学の問題を出したときのこと。多くの生徒が公式を思い出そうとしている中で、彼の一人が「この問題は図にすると分かりやすい」と言って黒板に図を書き始めました。すると複雑に見えた問題が、一気にシンプルな関係式として整理されたのです。
そのとき私は、「知識量よりも視点の切り替えの方が実はすごく大事なのかも」と驚きと共に感じました。
また遡ること中学のことですが、社会の時間に「日本は資源がない」などの話がある中、「いや、水があるのでは?」との発言がありました。
当時社会的なことは全然知らない私から見て「水?水って資源なの」とびっくりしつつ、なぜそうしたことを思いつくんだろうと、驚きつつ尊敬の念を抱きました。
本物のプロ、あるいは本物の知性とは、持っている知識の量ではなく、その「ものの見方や考え方」にあるのだと思います。彼らとの出会いは、私に「視点を変えること」の重要性を教えてくれた、私にとってのも大いなる人生の財産です。
「やるしかない」世界へ飛び込む勇気
不安と自信のなさを抱えながらも、一歩は「強いとは何かを知りたい」という一心でボクシングを始めます。
仕事の世界では、不本意ながらも「やるしかない」状況に追い込まれることは多々あります。逃げ場のないプロジェクト、失敗が許されないプレゼン...
しかし、一歩の凄さは、それが「自発的」であることです。
誰に強制されたわけでもなく、自ら辛い世界へと足を踏み出す勇気。これは、私たち社会人がつい忘れてしまいがちな、純粋で尊い「情熱」です。
新しい環境に飛び込むとき、恐怖を感じない人はいません。それでも「やるしかない」と一歩を踏み出すところに、物語は始まるのです。
継続こそが年齢を超えた「力」
ボクシングは、毎日毎日同じジャブを繰り返す、地味な反復練習の積み重ねです。
私はこれまで、ブログの執筆やIT技術、そして最近ではAIの勉強を続けてきました。若い頃のように一気に吸収できる感覚はなくなっても、続けることで理解は確実に深まると感じています。
ブログは最初、1記事書くのに丸一日かかることもありましたが、今では構成の組み立て方や書く順番が見えてきて、かなり短い時間で形にできるようになりました。
AIの勉強も同じで、最初は専門用語ばかりで戸惑いましたが、毎日少しずつ触るうちに、何をどう聞けば答えが変わるのかが少しずつ分かってきました。
年齢を重ねるほど、才能よりも「続け方」が力になると実感しています。
「継続は力なり」。その言葉通り、地道な反復を厭わなかった者だけが、いつかリング(現場)で自分を助けてくれる「本物の技術」を手にすることができるのだと思います。
一歩がサンドバッグを叩き続ける姿は、キーボードを叩き続ける私たちの姿とも重なります。
今回のまとめ
この記事で触れてきた内容を、
実体験とそこから得た気づきとして整理すると次のようになります。
| 見出し | 筆者の実体験 | そこから得た気づき |
|---|---|---|
| 本当の強さの定義 | 業務システム改善で、速度ではなく入力自動化が本当の解決だった | 強さは技術そのものより、困りごとの本質を見抜く力 |
| コミュニケーションという武器 | 現場に通って作業の流れを見たことで、仕様変更の方向が見えた | 会話や観察そのものが問題解決になる |
| 思考の次元が違う人との出会い | 学生時代に視点の違う友人の考え方に衝撃を受けた | 知識量より見方の違いが成長を生む |
| 自ら飛び込む勇気 | 一歩の姿を通して、自発的に挑む意味を考えた | 物語は自分で一歩を踏み出したところから始まる |
| 継続の力 | ブログやAI学習を続けて理解と速度が変わった | 才能より積み重ねが長く効いてくる |
いじめられっ子だった一歩が、勇気を持って踏み出した第一歩。それは、エンジニアが新しい課題に立ち向かう姿勢そのものでした。
寄り添う心、多角的な視点、そして地道な継続。 これらを持って、私もまた、次なる「一歩」を踏み出し続けたいと思います。
今回の記事が、目の前の仕事で「技術以外に何が足りないのか」、そして問題解決できるエンジニアに必要な視点とは何かを考えるきっかけになればうれしいです。


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