会社の合併や部署異動をきっかけに、「今まで普通にやってきたことが、なぜか通じない」と戸惑ったことはないでしょうか。私も会社合併を経験したとき、それまで当たり前だと思っていた仕事の進め方が、別の組織ではまったく通用しないことに驚きました。
特に忘れられないのが、合併後の最初のプロジェクト会議です。いつもの感覚で自由に意見を出したところ、会議室が一瞬静まり返りました。その沈黙で「ここでは自分の常識が常識ではない」と気づかされたのです。
それから私は、誰が意見を出す組織なのかを観察し、以前の成功体験をそのまま持ち込まず、相手が守りたいものを見ながら話すようになりました。ここでは、会社合併を通じて見直した3つのことをまとめます。
会議の沈黙で気づいた組織文化の違い
合併前にいた会社は、比較的自由な雰囲気でした。役職に関係なく意見を出し、思いついた案はまず話してみる。仕事の進め方も個人に任される範囲が広かったと思います。
ところが合併した相手の会社は、上から決まった方針を正確に実行することを重視していました。意見を出すにも順番があり、誰が発言するかも暗黙のうちに決まっていたようです。
その違いを最初に痛感したのが、合併後のプロジェクト会議でした。
私はそれまでと同じように「こういう進め方もあるのではないか」と提案しました。内容としては、そこまで突飛なものではありません。
けれど、発言した直後、会議室が静まり返りました。
「あれ、何かまずいことを言ったかな」
内心では、そんなことを考えていました。
反対意見すら出ず、ただ空気だけが固まったように感じたのを覚えています。
後になって分かったのは、その組織では決定済みの方針に対して意見を出すのは、基本的に上司の役割だと考えられていたことです。私にとっては前向きな提案でも、相手から見ると、立場を越えた発言に見えたのかもしれません。
新しい組織へ入ったときは、仕事内容より先に「誰が、いつ、どのように意見を出す文化なのか」を見る必要があると知りました。
意見を言わない人が多いからといって、考えていないとは限りませんし、実際には「勝手に発言してはいけない」と思っている場合もあるようです。
逆に、自由に発言する文化で黙っていると、何も考えていないと思われることもあり、ここは難しいところ。同じ行動でも、組織が違えば受け取られ方まで変わります。
それ以来、私は新しい環境に入ったとき、会議の進み方、発言する人、決定後の動き方を最初に観察するようになりました。それだけでも、余計な摩擦はかなり減ったと思います。
以前の成功体験をそのまま持ち込まない
組織が変わって戸惑う理由の一つは、
これまでうまくいっていた方法が通じなくなること。
合併前の会社では、自分から動くことが評価されていました。細かな確認を待たず、必要だと思えば先に試してみる。その姿勢が、仕事を早く進めることにつながっていました。
しかし、合併後の組織では、先に動くことが必ずしも評価されません。承認を取らずに進めると、「なぜ相談しなかったのか」と指摘されます。
最初のうちは、「これでは仕事が遅くなる」と不満を持っていました。
ただ相手のやり方にも理由はありました。大きな組織では、関係部署が多く、一人の判断が後から大きな手戻りにつながることがあります。管理を重視する文化は、責任の所在を明確にし、リスクを減らすために作られていたのです。
もちろん、何でも承認待ちにすればよいとは思いません。でも相手のやり方を単に遅い、堅いと決めつけるのも違うと気づきました。
以前の職場で正しかった方法は、新しい組織でも正しいとは限りません。
私は、まず確認が必要な範囲を把握し、その中で自分が動ける部分を探すようにしました。
例えば、正式な承認が必要なことは勝手に進めず、その代わり、承認を得るための資料や選択肢を先に準備する。決定を待つだけではなく、決まりやすい状態を作るようにしたのです。
以前のやり方をすべて捨てたわけではなく、
自由に動く強みを残しつつ、新しい組織のルールに合わせて使い方を変えました。
環境が変わったときは、自分のやり方を否定されたように思うことがありますが、能力が通用しなくなったのではなく、出し方を変える必要があるだけかもしれませんね。
相手の立場を読むと交渉が変わる
組織文化の違いは、会議の進め方だけでなく、交渉の場にも表れます。
相手が強く主張しているとき、つい内容だけを見て反論したくなります。私も以前は、相手の条件に対して、できるか、できないかをすぐに考えていました。
でも経験を重ねるうちに、言葉の裏にある事情を見るようになりました。交渉の場では、私は次の点を意識しています。
- 何度も繰り返す条件は何か
- 触れたがらない話題は何か
- 沈黙のあとに、最初に何を話すか
何度も繰り返す条件には、その人が絶対に守りたいものが隠れています。避ける話題には、社内で説明しにくい事情があるかもしれません。
ある大きなプロジェクトの打ち合わせで、相手企業の役員と直接話す機会がありました。最初は、「自分が余計なことを言ってはいけない」とかなり構えていました。
けれど、こちらが緊張して当たり障りのない話ばかりしても、相手の本音は分かりません。途中で少し開き直り、気になっていた点をそのまま質問しました。
すると、相手は笑いながら、これまで表に出していなかった事情を話してくれました。その瞬間、会議の空気が、ふっと肩の力が抜けたような感じで、柔らかくなったのを覚えています。
相手の役職や態度に圧倒されるより、その人が何を守ろうとしているのかを考えたほうが、話し合いは進みやすくなります。
空気を読むというと、相手に合わせて黙ることのように聞こえるかもしれません。でも私が大切だと思うのは、黙ることではなく、話す順番や言い方を変えることです。
同じ意見でも、相手の立場を理解したうえで伝えると、受け取られ方は変わります。会社合併を経験してから、その違いを強く意識するようになりました。
まとめ
会社合併で学んだのは、自分の常識をそのまま持ち込まないことでした。
私が見直したのは、次の3つです。
- 誰が意見を出す組織なのか観察する
- 以前の成功体験を新しい環境に合わせる
- 相手が守りたいものを考えて話す
組織文化の違いは、良し悪しだけでは判断できません。まず違いを知り、自分の動き方を少し変える。それが、新しい環境になじむ最初の一歩だと思います。


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