40代の頃、若手エンジニアが新しい開発言語を使う案を会議で提案したことがありました。
ところが上司は、「今さら変える必要はない。前例がないものを導入して、失敗したら誰が責任を取るんだ」と強く否定します。若手の表情が変わり、その場で話は終わってしまいました。
私は同じ会議にいたのに、何も言えませんでした。新しい技術に詳しくなかったことに加え、会議の空気を壊したくない、自分に矛先が向くのも怖い、という気持ちがあったからです。
後から何度も考えました。私は提案に賛成する必要などなかったんですね。「何を解決するための提案なのか」「小さく試せないのか」と質問するだけでも、強い否定で終わりかけた話を検討へ戻せたかもしれません。
若手の提案が強い言葉で止まった
その会議で、若手エンジニアが新しい開発言語を使う案を出しました。
当時の方法をそのまま使い続けるのではなく、新しい技術を取り入れた方がよいのではないか、という提案です。
私は話を聞きながら、「そういう方法もあるのか」と思っていました。ただ、自分自身もその技術に詳しいわけではありません。本当に導入した方がよいのか、リスクはどの程度なのかまでは判断できませんでした。
そこへ上司が、
「今さら変える必要はない。前例がないものを導入して、失敗したら誰が責任を取るんだ」
と強い口調で言いました。
その瞬間、会議の空気が変わりました。
若手の表情も変わり、それ以上説明を続けられる雰囲気ではありません。新しい言語にどんな利点があるのか、現在の方法には何が不足しているのか、といった話へ進むこともなく、提案そのものがそこで止まりました。
結局、その案が本当に採用する価値のあるものだったのか、私には今も分かりません。
ただ、「検討した結果、採用しなかった」のではなく、検討する前に強い言葉で話が終わってしまった。そのことは今でも覚えています。
私は会議の空気を壊せず黙ってしまった
あの場で何も言えなかった理由は、一つではありません。
まず、新しい開発言語について自分の知識が足りませんでした。詳しくないのに口を挟めば、「では、お前はこの技術を分かっているのか」と言われるかもしれません。
すでに上司が強い口調で否定した後です。「もう少し聞いてみませんか」と言えば、会議の流れを止めることにもなります。
そして正直なところ、自分へ矛先が向くのも怖かったです。
「じゃあ、お前は責任を持てるのか」
そう聞かれたらどうするのか。そこまで考えると、黙っていた方が楽でした。
若手の案を支持できるほど詳しくない。でも、あのまま終わってよいのかという違和感はある。
その間で迷ったまま、私は何も言いませんでした。
今振り返ると、「賛成できないなら口を出せない」と考えていたこと自体が間違いだったと思います。
後から「質問一つで戻せた」と気づいた
会議の後になって、何度かあの場面を思い出しました。
そして気づいたのが、私は若手の提案を擁護したり、上司へ反論したりする必要はなかったということです。
たとえば、
「今の方法では、どんな問題があるんですか?」
と聞くだけでもよかった。
あるいは、
「全部を変えるのではなく、一部だけ試すことはできませんか?」
でもよかったはずです。
私は当時、「発言するなら賛成か反対かを示さなければならない」と考えていました。でも第三者なら、その前に質問できます。
賛成する必要はなくても、検討を続けるための問いを出すことはできます。
この違いに、私は後から気づきました。
質問した結果、「やはり今の技術を使った方がよい」という結論になることもあります。それならそれで構いません。
私が後悔したのは、提案が採用されなかったことではなく、採用するかどうかを考えるところまで話が進まなかったことです。
今なら検討へ戻す5つの質問をする
今、同じような会議にいたら、提案の良し悪しをその場で決めようとはしません。
まず、次の5点を確認します。
- 何を解決するための提案なのか
- 現在の方法と比べて何が変わるのか
- 小さな範囲で試せないか
- 導入する負担やリスクはどの程度か
- うまくいかなかった場合に元へ戻せるか
たとえば、「前例がない」という理由で止まりそうなら、
「全部を切り替えず、一部だけ試して確認することはできませんか?」
と聞けます。
失敗時の責任が問題なら、
「試した結果が悪かった場合、元の方法へ戻せる範囲はどこまでですか?」
と確認できます。
また、提案した本人に、
「今のやり方では、何が一番問題だと思っていますか?」
と聞けば、新しい技術を使いたいという話から、「何を改善したいのか」という話へ戻せます。
こうした質問は、提案者を助けるためだけのものではありません。賛成する側にも反対する側にも、判断材料を増やす意味があります。
第三者として私が今見るのは、誰が正しいかではなく、判断するための材料が出る前に話が終わっていないかです。
提案を通すより次も言える終わらせ方にする
若手の提案を守るというと、「若手の案を採用させること」のように聞こえるかもしれません。
私はそうは思いません。
提案には、良いものもあれば現実的ではないものもあります。経験が浅ければ、コストやリスクを十分に見られていないこともあるでしょう。
だから、無条件に擁護する必要はありません。
ただ、
「前例がないから駄目」
「失敗したらどうする」
だけで話を終えるのではなく、
「何が足りないのか」
「どの条件なら試せるのか」
「今回はなぜ見送るのか」
まで整理できれば、採用されなくても次につながります。
私が大事だと思うのは、ここです。
若手の提案を守ることは、提案を採用させることではなく、次も意見を言える終わらせ方にすることです。
今回の案は難しい。でも、ここを調べれば次は検討できる。
今回は導入しない。でも、提案したこと自体を否定しているわけではない。
そういう終わり方なら、本人も次の提案を出しやすくなります。
会議後に一言声をかけることもできますが、私が今なら優先したいのは、まず会議の中で検討の余地を残すことです。
40代の頃の私は、空気を壊したくなくて黙っていました。
今なら、提案に賛成する代わりではなく、話を検討へ戻す質問を一つ挟みます。
まとめ
若手の提案が強い言葉で否定されたとき、第三者がその案を無条件に擁護する必要はありません。
私自身、あの会議で提案された新しい開発言語について十分な知識がなく、案が正しかったのかは今も分かりません。
それでも、
- 何を解決する提案なのか
- 今の方法と何が違うのか
- 小さく試せないか
- 負担やリスクはどの程度か
- 失敗した場合に戻せるか
という質問ならできました。
あの頃の私は、「発言するなら賛成か反対かを決めなければならない」と考えて黙っていました。今は、どちらかを決める前に、話を検討できる状態へ戻すのも第三者にできることだと思っています。
提案を通すことより、採用されなかったとしても「次も意見を言ってみよう」と思える終わらせ方にする。あの会議を振り返ると、今ならそこを大切にします。


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