「指示を出さないと誰も動かない」「問題が起きても、自分で判断しようとする人がいない」。以前、外注スタッフが中心の小さな運用チームを任されたとき、私はそんな状況に直面しました。
会議で意見を求めても、返ってくるのは沈黙ばかりです。こちらが答えを出せば作業は進みますが、それを続けるほど、メンバーはますます指示を待つようになりました。
この記事では、沈黙していたチームにどう問いかけたのか、役割と判断範囲をどう渡したのか、出てきた小さな提案をどう成功体験につなげたのかを紹介します。指示待ちの原因を本人の性格だけで片づけず、自ら考えて動ける状態を作るための参考になりましたら幸いです。
沈黙のチームに問いかけを続けた理由
当時のチームは、何か問題が起きても「何をすればいいか分かりません」と止まってしまう状態でした。指示した作業はこなします。でも、その作業に無駄があっても、誰かが気づいて直そうとすることはほとんどありませんでした。
最初のうちは、「もっと自分で考えてほしい」と何度も思いました。
ただ、そう言うだけでは何も変わりません。そもそも、意見を言ってもよいと思っていないのではないか。余計なことを言えば責任を押しつけられると警戒しているのではないか。そう考えるようになりました。
そこで対策として、毎日1時間のミーティングを設けてみました。進捗を確認するだけではなく、できるだけ本人たちに考えてもらうためです。
実際に投げかけていたのは、次のような質問でした。
- この作業で一番時間がかかっているのはどこか
- 同じことを二度やっている部分はないか
- 自分が責任者なら、どこを直すか
- 明日一つだけ変えるなら、何を変えるか
とはいえ、最初の数日はほとんど反応がありませんでした。
こちらが質問しても、誰も目を合わせません。会議室には、「何か言って間違えたら困る」「自分の意見など求められていない」というような重たい空気がありました。
質問の仕方が悪いのかもしれない。
毎日1時間も続ける必要があるのか。
正直、私自身も途中で迷いました。
でも、ここですぐ私が答えを言えば、また元の状態に戻ります。
沈黙が続いても問いかけをやめず、発言が出たときは、内容の良し悪しより先に「言ってくれたこと」を受け止めるようにしました。
すると、ある日、一人のメンバーがぽつりとこう口にしたのです。
「ここ、実は二重作業になっています...」
何気ない一言でしたが、
それを聞いたときは、内心「ついに言ってくれた!」と物凄く嬉しかったことを今でも覚えてます。
大きな改善案ではありません。でも、誰かに指示された答えではなく、自分で現場を見て気づいた意見でした。
指示待ちを変える最初の一歩は、正しい答えを出させることではなく、考えを口にしても大丈夫だと思ってもらうことです。最初から立派な提案を求めると、かえって発言しにくくなります。
小さな違和感や不便さでも、まず言葉にしてもらう。そこから少しずつ、他のメンバーも話すようになっていきました。
自分で判断してよい範囲を具体的に渡し
問いかけを続けるうちに、意見は少しずつ出るようになりました。
ただ、「では誰が対応するのか」となると、また全員が様子を見てしまいます。意見を言えても、担当や責任の範囲が曖昧なままだったからです。
そこで私は、一人ひとりの役割を具体的な言葉にして渡すようにしました。
単に「この作業をお願いします」と伝えるのではなく、「この領域の確認担当」「品質の最終確認役」といった形で、何を任せるのかを分かりやすくしたんですね。
実際に、あるメンバーには「品質最終確認スペシャリスト」という役割を任せました。
それまでのチェック作業には、「最後は誰かが見るだろう」という空気があり、担当が曖昧だったため、見落としがあっても、自分の問題として捉えにくかったのだと思います。
役割を伝えたあと、そのメンバーは「ここは自分が確認します」と言うようになりました。こちらから細かく指示しなくても、確認漏れを探し、必要な部分を周囲へ伝えるようになったのです。チーム全体でも、チェックの抜けが少しずつ減っていきました。
その変化を見て、役割は単なる名前ではないのだと思いました。
「この部分はあなたに任せる」と周囲へ示すことでもあり、本人には「あなたなら任せられる」という期待を伝えることでもあります。ただ、立派な肩書きを付ければよいわけではありません。
本人の得意なことと合っているか。
責任だけを渡していないか。
どこまで自分で判断してよいか。
こうした部分も一緒に伝える必要があります。
例えば、確認だけを任せるのか、不具合を見つけたら修正方法まで決めてよいのか。そこが曖昧だと、結局また指示を待つことになります。
人は役割だけでなく、自分で決めてよい範囲が分かると動きやすくなります。
役割と判断範囲を具体的にしてからは、「誰かがやるだろう」という場面が減り、メンバー自身が自ら「ここは私が見ます」「この部分はこちらで判断します」と言う場面も増えていきました。
小さな提案を任せて成功体験に変える
意見を聞き、役割を渡しても、
リーダーが最後にすべて決めてしまえば、メンバーはまた受け身に戻ります。
そこで私は、出てきた小さな提案を、できるだけ本人に任せるようにしました。
最初に出た「二重作業になっています」という意見も、私がすぐ改善方法を決めたわけではありません。
「では、どうすれば一度で済むと思いますか」
そう聞き、本人に作業の流れを整理してもらいました。
確認すると、たとえば同じ内容を別々の表へ転記している部分があり、実際には完全に不要な作業ではありませんでしたが、入力する順番と記録方法を変えれば、一度の作業で済ませられることが分かりました。
そこで、そのメンバーに簡単な見直し案を作ってもらい、チーム内で試すことにしました。最初から大きな改善を任せたわけではありません。まず一部の作業だけで試し、問題がなければ範囲を広げる形です。
実際に試してみると、作業時間が少し短くなり、他のメンバーからも「こっちのほうが分かりやすい」という声が出ました。提案した本人の表情が、少し照れているような、嬉しいような、そんな感じに変わったのを覚えています。
自分の一言が、実際の改善につながった。
しかも、周囲にも認められた。
その経験が、次の発言への自信になったのだと思います。
小さな提案でも、実際に任せて結果を見せることで、自分で考える意味が伝わります。
意見を募集しても、毎回リーダーが却下したり、結局自分で決めたりすれば、メンバーは「言っても無駄だ」と考えるようになります。
もちろん、出てきた提案をすべて採用できるわけではありません。うまくいかない案もありますし、リスクが大きくて任せられないものもあります。そんなときも、ただ否定するのではなく、どの部分が難しいのかを説明するようにしました。
一方で、試せる範囲なら小さく任せる。
- 一部の作業だけで試す
- 期限を決めて検証する
- 結果をチームで共有する
- 改善点があれば本人と一緒に直す
この繰り返しによって、少しずつ「言われたことをやるチーム」から、「自分たちで気づいて提案するチーム」へ変わっていきました。
3か月ほどたった頃には、こちらから質問しなくても、「この作業は変えたほうがいいと思います」と声が上がるようになりました。
劇的な変化ではありません。でも、最初は質問しても誰も話さなかったチームです。そのメンバーたちが、自分から改善案を持ってくるようになったことは、私にとって大きな変化でした。
まとめ
指示待ちのチームを変えるには、指示を増やすのではなく、メンバーが自分で考えて動ける状態を作ることが大切だと思います。
私が見直したのは、意見を言っても大丈夫だと思える空気、何を任されているか分かる役割、小さな提案を実際に試せる機会でした。
最初から大きな変化を求める必要はありません。「ここは二重作業になっています」という小さな気づきを受け止め、本人に任せてみる。そんな積み重ねが、自ら動くチームにつながると思います。


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